不安な気持ちを解消するにはどうすればいいのか。公認心理師の柳川由美子さんは「仕事で成功している人ほど『もっと努力しなければダメ』という思いこみが強く、不眠や体調の悪化まで追いこまれるケースは多い。まずは自分自身を静観して、『思考の癖』に気づくことが大切だ」という――。
鬱
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「一流キャリアウーマン」がカウンセリングに訪れた理由

「高校時代の友人たちは、昔からの夢を実現させてすごいね、と言ってくれます。でも、私はこんな自分では全然ダメだと思ってしまうんです」

私のカウンセリングルームには、キャリアで成功をおさめた女性のクライアントさんも多く訪れます。その中でも30代のAさんのことをよく覚えているのは、明るく自信にあふれた表情からは抱えている悩みを想像できなかったからです。

服装も洗練されていて「カッコいい」という表現が似合うAさんは、高校時代から税理士を目指してきました。大学も多くの卒業生が税理士として活躍している大学を選択。在学中から税理士試験を受け始め、いくつかの科目に合格。卒業後は大手税理士事務所に入所しました。

私が思わず「すごい。がんばられたんですね」と言うと、Aさんは「そんなことないです。私と同じMARCH出身の税理士は多いですが、早稲田、慶應出身の人もいます。それに税理士試験にもっと早く合格できる人もいますから」と言われてしまいました。

一瞬で「ネガティブ思考の連鎖」を中断させる方法

そんな彼女がまず、カウンセリングで訴えたのは、「常に不安でしかたない」ということ。いつも仕事のことが頭から離れない上に「特に業務でうまく対応できないことがあった日などは、さらに悪いほうに考えて止まらなくなってしまうんです」と打ち明けてくれました。眠れない日が増えて体調も悪いことから、もっと自信に満ちた人でありたい、元気を取り戻したいということでした。

このようにネガティブなことを考えると止まらなくなってしまう状態を心理学では「ぐるぐる思考」「反芻はんすう思考」とよびます。彼女はこの思考について書いた私の記事を読み、相談したいと思ってくれたそうです。

ぐるぐる思考は誰にでも起こりうるものですが、放置してしまうとネガティブな心理状態から抜け出せなくなってしまいます。実は「考えないようにする」のは逆効果で、別のことを考える、他のことに集中するなど、意識を逸らすのがベスト。最も簡単なのは、この思考に陥っている自分に気づいたら「パン!」と大きな音を立てて手を叩き、「ストップ」と叫ぶ方法です。大きな音にハッとすることで思考を中断させることができます。