竹の子を食べてみようと思った先祖に一目置きたい
爪楊枝の無い店では要注意
今放送中(2023年)の大河ドラマ「どうする家康」でも食事のシーンがある。殺伐とした戦国の世にあっても、夕餉を囲むと心が和む。演者もそれなりに楽しみにしているのだ。ちなみに昨日の撮影シーンの献立は雑穀米に里芋の煮っころがし、なます、竹の子の煮物であった。どこかのオーガニックレストランのランチの如くである。なますにニンジンが入って無いのは、当時まだ日本に入ってきていなかったからだそうだ。今後もブロッコリーやエリンギなどは乱世の食卓に並ぶことはない。そこに竹の子がいることで春のシーンだということがひと目で分かる。
しかしこの竹の子という食べ物、昔から食べられていたそうだが、野菜でも果物でもない、謂わば木材に近い。それを食べてみようと思った先祖に一目置きたい。当然堅いし、独特のえぐみがある。食べられないと判断してしかるべきだ。しかしなんとか食べる方法はないか。土から顔を出す直前なら柔らかくはないか。そしてついに糠で茹でるというアクの抜き方までたどりついた。はたしてそこまで何百年かかったことだろう。おかげで僕らは春のこの時期、香りと食感を楽しむことが出来る。
今でもメンマを身体が無性に欲する時がある
下北沢と世田谷代田の中ほどにボーナストラックという若者が集うエリアがある。様々な店が軒を連ねていて、僕が本を出版した時にその中の本屋さんでイベントをやらせていただいたこともある。実は昔、この辺りには大きなメンマ工場があった。あたり一帯に妖しい香りを漂わせていたエリアだった。メンマ臭というやつは厄介ですぐさま中華が食べたくなる。バイト先のラーメン屋で賄いを食べてきたはずの僕にとってもしかりだった。
今でもメンマを身体が無性に欲する時がある。そんな時は丸の内の地下に車を停めて、丸ビルの6階に向かう。そこの「赤のれん」というラーメン屋、実は歴史が古く、僕がまだ小学生だった頃、福岡箱崎に「赤のれん」という老舗のラーメン屋があってそこからのれん分けされた店だ。流行のバリバリに硬い麺ではなく、少し平たい優しい細麺と、細切りのメンマとの相性が抜群。トッピングのメンマに麺を絡ませて豚骨スープを啜る。あぁ旨い。竹を食べるための工夫に苦心した先祖に思いをはせながら。