生成AIの成長は、まだほんの入り口
筆者も戦略コンサルティングの実務で生成AIを活用している。その実感からも生成AI産業が成長を続けることを確信している。
例えば、あるテーマについて過去に作成したパワーポイントの資料が100枚ほどあるとする。生成AIに100枚の資料を読み込ませ、文章にまとめて原稿を作成してもらう。あるいは、コンサルティングのアイディアを出してもらう。10個のアイディアが1分もかからないで提示され、そのうち3つは筆者がまったく思いつかないものだった、ということも珍しくない。筆者にとって生成AIは、すでに日々の仕事に欠かせないものとなっている。
特に画像や音声、動画をAIに読み込ませ、特徴や差異を解析する「ディスクドライブ」の能力はかなり高いと感じている。
例えばコンビニの店頭で、棚に並んでいる商品をスマホで撮影する。GPT-4oに画像データを読み込ませて解析させると、目立つ位置にイチオシ商品があるか、顧客が選びやすいか、商品の価格から顧客がどんなイメージを持つか、といったことを瞬時に解析してくれる。購買行動などの大量なデータを読み込ませることで、経験豊富なベテラン社員でないと気づかない点を見つけて指摘してくれるのだ。すでに実務的には分析対象によってはベテラン社員や店長の水準に到達していることは驚異的だ。
短期的にAI関連のメガテック企業の株価が急落しようと、生成AIの将来性は揺るぎない。重要なことは、これから指数関数的に技術が進むということだ。ChatGPTが登場した頃から考えると、2年足らずで生成AIの回答はずいぶん進化したと感じられる。実際にオープンAIの2019年GPT2はパラメター数が15億、2020年GPT3は1750億、GPT4は1兆超えと、モデルの大きさは指数関数的に拡大している。パラメターは、AIモデルの心臓部とも言える要素であり、モデルの学習能力と最終的な性能を決定する重要なものだ。
いわゆる「キャズム(※)」を超えるのは時間の問題だろう。
仕事やプライベートに生成AIが本格的に活用され、生成AI対応のスマートフォンが普及している未来を想像すると、現在の局面はまだほんの入り口に立っただけにすぎないことと感じている筆者である。
※:アメリカの経営コンサルタント、ジェフリー・ムーアが提唱した企業・商品・サービスの成長における「壁」のこと。大半の新商品や新サービスは成長に伴って、キャズムに直面する。