銀座のクラブは「闘う男が素になれるわが家」でもあると亜紀ママは言う。

(PIXTA=写真)

「クラブは仕事の場でもあると同時に、癒やしの空間でもあります。ビジネスにも役に立つし、帰ったときにホッとする癒やしの空間になるほうがいい。店の女の子も男の子も、普段は出入りできないようなところに連れていって育ててやろうという気持ちの人が多いですね。常日ごろから、家族のようなお付き合いができる人は銀座の使い方が上手だなと思います」

ただし、わが家同然だからといって、いつも会社の愚痴や悪口を言っているような男性は出世しない。どうしても言いたいときはママだけに「今日は愚痴を聞いてくれ」と前置きをする。普段は愉快な楽しいお酒の席。でもしんみりと語るときもある。メリハリをつけているのだ。

「それも小さな愚痴ではなく、大きな愚痴ですね。部下にも奥さんにも話せないことを、話すことで決断しているんでしょう。人事を相談されることもありますよ」(亜紀ママ)

そんな男性は遊び方もきれいだ。もちろん夜の銀座であるから、色っぽい側面はあるが、伸びる男性は女性も口説かない。

「本気で女性を口説いたら、その店はもう『わが家』でなくなってしまう。そこをわかってらっしゃる方は『デートしようよ』と言っても、その実、うまく疑似恋愛を楽しんでいらっしゃいます。下ネタの扱いも上手で、女性たちが不愉快になる線まで落ちる前にパッと話を変えるんです」(亜紀ママ)

「いつもママに振られちゃってるよ」と、ステキな男性ほど自分の弱みを上手に見せるのだ。つまりは「女性に対しても余裕がある」ということだ。

そして「優しさ」も共通するところだ。お客様の目の前で失礼なことを言ってしまった新人に対して「後で注意してあげて」とこっそり亜紀ママに耳打ちしてくれる人がいる。「失敗しても目の前では怒らない。でも悪いことはちゃんと伝えてくれます。懐が深いんですね。そして女の子たちの努力も部下の努力と同じようにちゃんと見ていて、評価して応援してくれます」。

ただの優しさではなく、本当に人のことを考えている人だけが持つ「独特の優しさ」があるのだとママたちは口々に語ってくれた。

「クラブ 稲葉」白坂亜紀ママ
1966年、大分県生まれ。早稲田大学在学中にクラブに勤務、現在は銀座で「クラブ 稲葉」をはじめとした4店舗を経営。著書に、今回登場したママたちにインタビューした『銀座の秘密――なぜこのクラブのママたちは、超一流であり続けるのか』。
(澁谷高晴=撮影 PIXTA=写真)
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