人は自分を好いてくれる人を好きになる
それでは、具体的になぜ愛情が友情を強くするのでしょうか?
好意の返報性や推測される好意といった理論からヒントを得られます。こうした理論でもっとも重要なのは、人は自分を好いてくれる人を好きになるという点です。
1958年に画期的な研究が行われました。お互いに知らない人たちを集めて、授業を改善する方法について議論してもらいました。参加者は、到着前に性格検査を受けており、議論の開始時、実験用に準備された偽りの情報を渡されました。
内容は、性格検査の結果から、参加者のうち3人が、自分に好意を持つ可能性がもっとも高いと予測されると書かれてありました。議論の終了時、研究者らは実験参加者に対し、後でふたり組に分ける可能性があるので、誰と組みたいか教えてほしいと伝えました。
参加者は概して、自分を好きだと思い込まされた人をペアの相手として選びました(※5)。
ほかに、見知らぬ人たちをやり取りさせ、お互いにどれだけ好意を持ったか報告してもらう実験や、知っている人についてどのくらい好きか点数を付ける実験などで、同じ結果が出ています。人は、自分を好いてくれると思う人を好きになるのです(※6)。
※5 Carl W. Backman and Paul F. Secord, “The Effect of Perceived Liking on Interpersonal Attraction,” Human Relations 12, no. 4 (1959): 379–84.
※6 Susan Sprecher et al., “You Validate Me, You Like Me, You’re Fun, You Expand Me: ‘I’m Yours!,’ ” Current Research in Social Psychology 21, no. 5 (2013): 22–34, ; Adam J. Hampton, Amanda N. Fisher Boyd, and SusanSprecher, “You’re Like Me and I Like You: Mediators of the Similarity–Liking Link Assessed before and after a Getting- Acquainted Social Interaction,” Journal of Social and Personal Relationships 36, no.7 (2018): 2221–44.
重要なのは相手に自信を持たせること
この結果は、友達づくりの誤解に異論を突きつけるものです。
友達をつくるには、ジェームズ・ボンドのように洗練されていて、ビル・ゲイツのように賢く、クリス・ロックのようにおもしろくなければいけない、と私たちは考えています。抗えないほどの人間性で人を魅了しなければいけないのだと思い込んでいますが、そうではありません。
ある研究では、友達の要素として「楽しませてくれる」や「話し上手」は、もっとも重要でないと報告されています(※7)。
一方でもっとも重要な要素は、自分に自信を持たせてくれることでした。
友達づくりが得意な人には共通点がひとつありますが、それはその人自身が何者かというより、人をどう扱うかに関係しています。
その人たちは、相手に「自分は重要な存在だ」と感じさせるのです。世界屈指の好感度を誇る著名司会者オプラ・ウィンフリーは、番組のゲストが何か深いことを言ったときに、「目から鱗ですね!」や「この話はツイートすべき!」と言うことで、これを実践しています。
しかも「あなたは重要な存在」だと伝えるのに、新車を買ってあげる〔オプラ・ウィンフリーが番組で、観客全員に新車をプレゼントしたエピソードは伝説的な回となっている〕ほど効果的な方法はありません!
オプラの言葉を借りれば、「誰だって、自分の意見に耳を傾けてほしいし、自分が重要な存在だとか、自分の発言には意味があったと思いたいものなのです」
※7 Brant R. Burleson, Adrianne W. Kunkel, Wendy Samter, and Kathy J. Working, “Men’s and Women’s Evaluations of Communication Skills in Personal Relationships: When Sex Differences Make a Difference and When They Don’t,” Journal of Social and Personal Relationships 13, no 2. (1996): 201–24.