特別受益と見なされるケースも

ただし、巨額の生命保険がかけられていたとすると、受取人以外の相続人からすれば、たまったものではありません。

相続人の間であまりにも不公平があると、生命保険の受取金は特別受益と見なされて、相続財産に巻き戻して遺留分を計算するという最高裁判例があります。

たとえば、生命保険の受取金が1億円で、遺産は1000万円しかないといった極端なケースだと、裁判所はそうした判断を下す可能性が高いため、注意が必要です。

すべてを生命保険に投じるのはリスクが大きすぎる

生命保険で特定の人に財産を渡せるといっても、財産を残す側の本人がどれだけ長生きするかはわかりません。

それなのに、健康なうちにまとまった財産を生命保険に移してしまうのは、相当な覚悟を要することです。

自分の残りの人生を考えると、ある程度は自分の手元にキャッシュを残しておきたいところです。

とりわけこの事例でいえば、営業マンの銭本が鶴子さんのライフスタイルや価値観、相続のことまで考えて提案しているかは怪しいものです。

自分の営業成績を上げるための提案なのか、それとも顧客のことを考えての提案なのか? それを見極めるのは難しいと思います。

それでも、長男の亀男が「母のことをよく考えてこの商品を提案してくれた」と思えるなら、加入すればいいと思います。そうでなければ、さすがにキャッシュをすべてひとつの生命保険商品に投じるのはリスクが大きすぎます。

仮面を持ったスーツ姿の男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
すべてを生命保険に投じるのはリスクが大きすぎる(※写真はイメージです)