孫のように思えてきた
鶴子は、銭本が孫のように思えてきました。
「息子たちは全然帰ってこないけど、すぐに来てくれる銭本さんのほうが頼りになるわ」
いつしか鶴子は、銭本が来るのを心待ちにするようになりました。
しばらくして、銭本は次のように鶴子に話しました。
「お金を銀行に入れていても、金利なんて雀の涙でしょう。生命保険にしたほうがずっとお得だと思うな。相続対策にもなりますしね」
定期預金を解約して、3000万円の保険に加入
鶴子は2000万円の定期預金のほかに、保険商品にも加入していました。
銭本は、それらをすべて解約して、自分が提案する保険商品に1本化したほうがいいと主張します。総額は3000万円にのぼりますが、銭本を信頼しきっていた鶴子は「あなたが言うならそうなんだろうね。それじゃ、その保険に入るわ」と承諾しました。
生命保険協会の「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」によると、高齢者が保険を契約する際、親族らが同席するのが原則とされています。
銭本からそう説明を受けた鶴子は、長男の亀男に電話をかけて頼みました。
「保険に入るから、あんた、立ち会ってよ」
「は? どういうこと?」
「銀行に預けるより、保険に入ったほうが得なんだって」
「おふくろ、大丈夫かよ。だまされてんじゃない?」
「営業の銭本さん、とても親切よ。あんたよりよっぽど頼りになるんだから」