Q 柳井さんが読んだ生涯最高の「ビジネス書」を教えてください(38歳・女・IT)

今はもう経営書を毎日読むことはなくなりましたが、昔は1日1冊近くの経営書を読んでいました。

23歳で父親から小郡商事という会社を任され、必死で走ってきて、ふと立ち止まって考えると社員は100人近くになっていました。本格的に経営を勉強しなくてはいけないと感じたのが、読み始めたきっかけです。

読破した何千冊という経営書の中で、まさに僕の「最高の経営の教科書」と呼べるのは、アメリカの通信会社ITTの最高経営者として584半期連続増益を果たしたハロルド・ジェニーン氏の『プロフェッショナルマネジャー』(アルヴィン・モスコー共著・プレジデント社刊)です。1985年頃、山口県宇部市の書店で買いました。今日、僕が経営者としてやっていくことができているのは、この本のおかげなんです。多分、この本を山口で買っていたのは、僕ひとりじゃないでしょうか(笑)。

この本の凄いところは、まず、評論家や経営学者、ときには経営者さえも求めがちな「経営のセオリー」を全否定することから始まっている点なんです。

そして――経営とは本を読むのとはまったく逆で、終わりから始めてそこへ到達するためにできる限りのことをすること――つまり経営とは、目標設定をして、何をすべきかを逆算し、その目標を達成するためにすべてを賭けることなんだと教えてくれたのです。

衝撃でした。

僕はそれまで、経営というのは何かをゼロから始めて1つ1つ形にしていくことだと考えていたからです。しかし、どんな努力も目的地が決まっていなければ「経営」ではない。