人間は安全な場所からでしかモノは言えない

多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(Jam著・サンクチュアリ出版)という本がヒットしましたが、そもそも他人なんて自分にそれほど関心はありません。何度かネットで私も炎上を経験しましたが、向こうは無記名で石を投げてくるだけで、いや石を投げたいだけで、何も考えていないものです。

だからこそ、周囲からの評価なんて一瞬だけのもの。よって「最後の決断は自分でしましょう」という具合に考えてみたらいかがでしょうか。この落語の花火見物の観衆こそ、まさに「ネット民」であります。

この落語で大好きなところは、大衆が「たが屋、悪くない!」と声を上げた途端に首を下げて、侍からの怒りの視線をかわすシーンです。「人間誰しも、安全な立ち位置からでしかモノは言えない」という、未来のSNSの登場を予言しているかのような先進性をこの落語に感じてしまいますよね。匿名性にあぐらをかけば、誰だって一人前のことは言えましょう。

横断歩道を行き交う人の頭上に浮かぶ様々なSNSのアイコン
写真=iStock.com/cofotoisme
※写真はイメージです

野党からの質問に「てめえで調べろ」

談志は、落語界初の国会議員になりました。沖縄開発庁政務次官になったとき、「沖縄の失業率を知っているか」と野党から突っ込まれました。そのとき「てめえで調べろよ」と言い放ったそうです。いやあ、いまなら確実に炎上案件のような発言を繰り返していたものです(昨今の政治家の失言なんかかわいく感じますよね)。

また、ある日の街頭演説で、名もなき一般聴衆から「お前なんか国会議員になれるわけがない!」と罵声を浴びせられました。談志はすかさず「あなたより可能性はあります」と言い返したそうです(カッコいいですよね)。

生意気を絵に描いたような人生を走りつづけてきた人でしたが、かのような罵声を浴びせてくる人間の心を見透かしていたようにも思います。