丸亀製麺のテーマパーク化の影に、森岡毅あり
丸亀=テーマパークというイメージは偶然の産物ではない。しっかり計算されたものだ。というのも、店舗設計に大きな影響を与えているのが、かつてジリ貧だったUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)を再生復活させた日本を代表するマーケター森岡毅の存在だ。
丸亀は2018年頃、業績が悪化。テコ入れのため、招聘されたのが森岡だった。その構想のもと「丸亀製麺らしさ」を全面に押し出した店舗空間やサービスの改善を行ってきた。
その中で、「出来立ての『生』のおいしさにこだわる」ことを意識した店舗空間の再設計が行われてきたのだ。だからこそ前述したように店内に小麦粉の袋を意図的に置き、うどんを茹でる過程をしっかり見えるようにした。
ちなみに森岡は現在、沖縄北部に誕生予定の「ジャングリア」や、東京お台場に誕生した「イマーシヴフォート東京」を手がけている。丸亀のプロジェクトはこうしたテーマパークに負けるとも劣らないワザが投入されているのだ。
「体験を最大化」するものとしてのテーマパーク空間
テーマパークにせよ、商業施設にせよ森岡の空間作りで興味深いのは、常にそこでの体験価値が「最大化」することだ。
森岡は丸亀について語ったインタビューで「私にとってブランドは、『感動体験』とほぼ同義です。丸亀のこれからを考えると、『出来たての感動』を店で体験していただくことが一番です」と語っている(日経XTREND「森岡毅氏単独インタビュー 丸亀製麺・復活の秘策」 )。
強く意識しているのは、この「感動体験」。それを作り出すためにさまざまな戦略を打っている。「テーマパーク化」というとどうしても、その外観や内装だけの問題だと思ってしまうかもしれない。だが、その強みは、表面的な演出だけでなく、食体験によりゲストが内面的な満足度を最大化させることにある。
例えば、ディズニーランドには、「ゲストロジー」という、ゲスト(来場客)を満足させる独特の方法論がある。ここには、ゲストがパークを最も楽しめるようにするための方法が細かく書かれていて、ゴミ箱の位置や距離からスタッフの細かい所作まで、その徹底ぶりには驚かされるものがある。
こうした「体験の最大化」こそディズニーを人気たらしめる最大要因でもあり、森岡も独自のノウハウで「食堂」である丸亀に感動体験を取り入れているに違いない。
たかがうどん、されどうどん。勝ち組うどんもあれば、負け組うどんもある。
丸亀が客から熱い支持を得られ続けているのは、料金の中に、美味しさだけでなく、テーマパーク的な感動を無意識に体験できることも含まれているからなのかもしれない。