「うどん体験」を最大化させるテクニック
うどんチェーンの同業他社に、はなまるうどんもある。ここもセルフ方式であり、似た作りである。しかし丸亀のほうがより「うどん屋という体験」を純粋に、快適に体験させている。
例えば、メニュー表の工夫だ。丸亀は2020年に「CX推進部」という部署を設置した。CXとは「カスタマー・エクスピリエンス」、つまり「顧客体験」のことで、顧客の体験価値を最大限に高めるための戦略を立てる部署だ。
同部調査によれば、セルフ方式の列によって、後ろの人から急かされているように感じる、といった声もあるという。その解決策として、列を無くすのではなく、店の入り口にもメニュー表を置き、注文内容を決めてから列に並んでもらうようにしたという。よりスムーズなローテーションになり、客間のストレスは軽減される。客同士も和やかな関係になる。
「手打ちうどんを食べる」というストーリーを徹底的に体感させる
さらに興味深いのは、丸亀の店舗は、一つのショーのようになっていることだ。
ZOROYA.LLCも指摘しているが、丸亀では入り口と出口が別になっている店舗が多い。これには、客の動線をわかりやすくすることによって店舗側のオペレーションを効率よくする狙いがあるだろう。
加えて、動線を一方通行にすることによって、客はまるで一つの演劇(ショー)を見るような気分で店舗空間を体感することになる。うどんが茹でられ、器に載せられ、目の前に供され、食べる。このストーリーこそがご馳走となるのだ。もし、出入り口が一緒でもたつくようなことがあれば、その感動も薄まってしまう。その演出を最大化するために、こうした動線が取られているのだ。ちなみに、ディズニーランドでも同じで、その入口と出口は別々になっている。