塾経営を考えた2人の高校生

熊谷祐弥さん(岩手県立盛岡北高校3年生)。

熊谷祐弥(くまがい・まさや)さんは岩手県立盛岡北高等学校3年生(文系コース)。

「北高は盛岡第五になる予定だったんですけど、5って数字付けちゃうと、なんか学力が最後のほうみたいな印象を持たれて人が集まらないから名前を変えた……というふうに聞きました。一応ナンバースクールに入ってると自負しています(笑)」

熊谷さんは何屋になりたいんですか。

「『TOMODACHI~』に参加するまで、何になりたいというのが、あんまりなくて。それを見つけたいと思って参加したんですけど、その結果2つ考えました。ひとつが、JTBとか、そういう旅行する会社に勤める。もうひとつは、何か発明とか商品を開発するような企業を立てる」

ひとつずつ聞いていきましょう。「JTBとか」は、人が旅行するのをお手伝いする仕事という理解で合ってますか。

「はい」

発明もしくは商品開発をする会社は、もう少し具体的に業務の内容をいうと、どういう仕事をする会社になりますか。

「たとえばちょっとした発想で大ヒットするような商品とかあるじゃないですか、そういうものを開発して、なんでも手をつけて売り出してみたい。正直みんなにはバカにされるんですけど、学校でいつも、たとえばペンとかを見ていて『こういうふうにしたら使いやすいんじゃないか』とか考えたりするんです。あとは塾とかを『こういうふうに経営したら人も呼べて、いっぱいお金を稼げるんじゃないか』とか」

熊谷さんの塾経営の話は具体的だった。

「大学時代にちょっと小さめの塾を作って、自分の知り合い——たとえば日本史得意な人とか数学得意な人とかを少人数集めて、最初は少人数の中学生を集めて、中学生の中間テストなら、ピンポイントで教えるだけで点を取らせることができると思うんで、それで評判を呼んで、ちょっとずつ大きくしてって。塾経営で成功したいというのはあるけれど、塾は経営を学ぶステップの最初として考えて、成功したら後輩にその職を任せて、自分はほかの仕事就いたりとかしたいなと。こういう、ちょっといろいろ妄想みたいな発想をしてるから……」

熊谷さんは「妄想みたいな」と言ったが、聞いたこちらはまったくそう思わなかった。前例を知っていたからだ。1973(昭和48)年、久留米附属大学附設高校(福岡県)の1年生だった孫正義は、中学時代の担任教師を呼び出し、こんな提案をしている。

《「実は僕は、いまから学習塾を経営したいと思ってるんです。これが僕の考えた塾のカリキュラムです。どう思いますか?」(中略)「僕はまだ高校生なので、経営の表に出ることはできません。そこで、先生に頼みがあります。先生、塾の責任者をやっていただけませんか?」——『あんぽん』[佐野眞一著/小学館/2012年刊]p.81)》

この「前例」のことを話すと、「孫正義さんの経歴のことは、正直アメリカに行ったことがあるくらいしか知らなかった」という熊谷さんは、かなり驚いた。熊谷さん、今の話を孫正義が聞いたら「ほうらそうでしょ、塾って経営したいでしょ」と、ニヤリとすると思いますよ。さて、熊谷さん、仮に将来起業家になるとします。何が熊谷さんに必要ですか。

「人脈と、あと発想力が必要だと思います」

学校の話ではなく、そういう話から来ましたね。なぜ、発想力なんですか。

「テレビで、元プロ野球選手の人が全国の建物の床をつくる会社の社長をやっているというのを見たんです。プロ野球辞めて、商業とかの本を10冊読んで、どの建物にもぜったい床が必要で、その中で一番を取れたら確実に金儲けができるって考えて、今、大成功してるという。そういう発想力があれば大成功も望める。だから発想力が必要だと思うんです」

1964(昭和39)年生まれ、大阪市立高卒、大阪ガスを経て1989(平成元)年に巨人にドラフト2位入団、近鉄を経て1997(平成9)年に引退した松谷竜二郎のことだ。現役通算7年、59試合に登板し4勝4敗1セーブ。彼が率いるスチールエンジは、大手ゼネコンから建築物の床版の工事を請け負う業界有数の専門企業。東京・丸の内のパレスホテルや大阪駅前のヨドバシカメラの床も同社が担当した。岩手でも2011年2月に、いわて花巻空港の旅客ターミナル増設工事を担当している。

熊谷さん、実業家になったときには、どこに住んでいますか。

「どこでもいいんですけど、家は盛岡に持ちたいと思っていて。仕事をするためにせわしなく全国を回るようなのが理想かな」

たとえば実業家になって、法人を自分でつくったとします。本社の登記は盛岡市でしょうか。

「どうだろう。でも、たぶんそうなると思います」

人脈を得るためには、人数の多い東京で——という発想もあると思いますが。この問いに「確かにそうかもしれないんですけど」と前置きして、熊谷さんは盛岡発祥のレストランチェーンの名を挙げた。

(明日に続く)