パリオリンピックが8月11日(現地時間)に閉幕した。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「今回のパリ五輪は、『誤審』疑惑や選手村での盗難の多発といった大会運営の不備が目立った。3年前の東京五輪と比較すると、対照的なポイントが多い」という――。
エッフェル塔に掲げられた五輪マーク
エッフェル塔に掲げられた五輪マーク(写真=Ibex73/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

パリ五輪で相次いだ「疑惑の判定」

現地時間の11日に閉幕したパリ五輪は、日本勢の「メダルラッシュ」に沸いた。金メダル・メダル総数ともに海外で開かれたオリンピックとして過去最多となった。一方、柔道や男子バスケットボールをはじめ、「疑惑の判定」が続出し、日本中に、フラストレーションがたまったのではないか。

男子バスケットボールの日本対フランス(現地時間7月30日)が、「疑い」を象徴している。

この試合では、残り16.4秒の段階で、84対80で日本がフランスをリードしていた。そこからフランスのマシュー・ストラゼルに二度、トラベリングを疑われるシーンがあった。一方、3ポイントシュートの際、日本の河村勇輝がストラゼルに体を寄せたことで「ファール」と判定される。その結果、1ポイント分のフリースローが与えられたフランスは、同点に追いつく。

トラベリングは、せめて一度は取られるべきだし、河村のジャンプは、ストラゼルの体のどこにも触っていないように見えた。敗色濃厚な状況からの劇的な展開に、会場の盛り上がりは最高潮に達する。反対に、テレビ画面のこちら側には、判定への疑い、そして怒りが募った。

この「疑惑の判定」について、スポーツ専門サイト「Number Web」でスポーツライターのミムラユウスケ氏は、「紙一重のジャッジではあったし、違う会場の試合だったら、あるいはもう一度あの状況になったら、審判が異なる判定をする可能性も十分にあるだろう」と書いている。

試合中に「市民よ、武器を取れ!」の大合唱

なるほど今回の判定が偶然なら、ミムラ氏の言う「可能性」を想像して納得してもいい。けれども、パリ五輪での「疑惑」はバスケットボールにとどまらない。

筆者の印象に残っているのが柔道の混合団体の決勝(現地時間8月3日)。この試合で物議を醸したのが、3勝3敗で迎えた代表戦の出場者を決める「デジタルルーレット」の結果だ。

その前に、まず驚いたのは、試合中に行われたフランス国歌の大合唱だ。

柔道には、ゴルフやテニスほどの静けさを求められないとはいえ、試合中に大声で、フランス国歌を歌い上げるのは、観戦マナーの度を越している。3年前の東京五輪は無観客だったので、あくまで「たられば」にとどまるが、仮に、柔道の会場で、日本人の観客が「君が代」を大合唱していたら、どうとらえられたか。

もとより、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」は、フランス革命の歌で、歌詞には血生ぐささしかない。「市民よ、武器を取れ!」と呼びかけ、敵を殺そうと煽り立てる歌は、「平和の祭典」であるはずの五輪、それも、「礼に始まり、礼に終わる」柔道とは、正反対である。