販売状況や流通在庫をリアルタイムで可視化

②顧客認識

「顧客認識」のソリューションは、買い物客が自社商品を購入した理由を把握できることだ。ウォルマートには、買い物客を対象とした招待制のコミュニティ「Walmart Customer Spark Community」があり、メンバーは「認定ショッパー」と呼ばれている。

【図表4】顧客認識ソリューション
ウォルマートの公開資料を筆者翻訳

「ルミネート」を利用するサプライヤーは、認定ショッパーを対象とするアンケート調査やヒアリングを依頼できる。回答率は平均30~40%と高く、1~2日で完了する。

調査対象者は、お得意さま(ロイヤル顧客)、新規顧客、他社からの乗り換え顧客、潜在顧客、失効顧客など異なる性質・属性からピンポイントで指定できる。

③チャネル・パフォーマンス

「チャネル・パフォーマンス」では、買い物客の購入場所を表すデータの一覧が作成される。サプライヤーは、販売データや在庫データが店舗ごとにほぼリアルタイムで把握できる。

販売状況や流通在庫がリアルタイムで可視化されるだけでも、ルミネートを利用する価値があるだろう。

南サンフランシスコベイエリアのウォルマート
写真=iStock.com/Sundry Photography
※写真はイメージです

日本のスーパーが追いつくには10年かかる

日本ではマーケティング・データを得るために、スーパーなど小売店の売り場に調査員を派遣して商品をカウントすることが珍しくない。コストや時間をかけて集めていたデータが、「ルミネート」では1年中ほぼリアルタイムで入手できる。販売予測、在庫管理、商品開発などの仕組みが根本的に変わるはずだ。

ウォルマートは日本からすでに撤退しているので、今後「ルミネート」のようなサービスが日本で登場する場合、国内の大手小売チェーン発になるだろう。この記事の冒頭で述べたように、日本で実現すれば、広告業界への影響は小さくない。マーケティングやプロモーションなど業務の一部が不要とされかねないからだ。

しかし日本の小売チェーンが「ルミネート」のようなサービスをキャッチアップするには、まずアプリを通じて顧客とデジタルでつながる必要がある。買い物客の大多数がスマホで電子決済することも前提になるだろう。事前にクリアすべきハードルやインフラの整備がいくつもある。店舗数は多くても、デジタル活用の面で遅れが目立つ日本の小売チェーンがウォルマートのレベルに追いつくためには、5年から10年はかかるのではないか。今後数年で実現するとしたら、DXの成功で知られるホームセンターのカインズあたりが有力な候補になるかもしれない。

(構成=伊田 欣司)
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