ドローンを使ってハマスやヒズボラの幹部を暗殺
さらにモサドは、1979年にはミュンヘン事件から実に7年後、「黒い9月」の作戦担当官でパレスチナ解放機構(PLO)幹部でもあった、アリー・ハッサン・サラメをベイルートで自動車爆弾により暗殺しています。サラメは、ミュンヘン事件以外にも飛行機のハイジャック事件などイスラエルへの多くの攻撃に関与しているとモサドは断定していました。
こうした諜報機関と軍が連携した軍事行動のほかにも、イスラエル国内外でユダヤ人を狙った爆弾テロなどが起こるたびに、報復として、数多くの暗殺が行われています。PLOの主流派ファタハの幹部、ハマスの幹部やヒズボラの幹部を爆殺したり、ドローン攻撃、ヘリからのミサイル攻撃などによっても次々と殺害してきました。無人機=ドローンをこれだけ多くの暗殺に本格的に利用した最初の国家はイスラエルです。
これまで関わった暗殺は推計で2700件にも
暗殺は首相をはじめ政府内で議論されて決定されますが、歴史的にもその数はあまりに多く、情報機関の歴史が専門の日本大学の小谷賢教授は、2700件近いと推定しています。
ミュンヘン事件のように世界的に有名になった攻撃への報復はもちろん、イスラエル国内で繰り返される爆弾テロなどに対して報復するパターンも多く、暗殺はイスラエル政府の日常的な手段となっています。
2024年5月、イスラエルと敵対するイランのエブラヒム・ライシ大統領がヘリコプター墜落事故で死亡した直後には、イスラエル政府高官が「我々ではない」と暗殺を否定したと報じられました。こうした報道が流れるくらい、イスラエルは暗殺作戦を通常の政策手段として使う国家だと見なされているのです。