高齢者が気をつけたほうがいい病気は何か。医師の和田秀樹さんは「うつ病は一般人口の3%程度の有病率だが、65歳以上になると、それが5%に上がる。うつ病になり食欲不振になると、高齢者は簡単に脱水症状を起こし、そこから脳梗塞や心筋梗塞、肺炎を起こしやすくなる。これほど高齢者に身近なうつ病の怖さはあまり知られていないが、私はもっとも恐れている病気だ」という――。

※本稿は、和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

意気消沈する老人
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
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高齢者は身体と心のダメージが増え「うつ病」になりやすい

私が診ている患者さんの6〜7割は認知症で、3割ぐらいがうつ病です。

認知症は多幸的になる人が多いのですが、うつ病は悲観的で自分が人に迷惑をかけているという罪悪感に苦しんでいる人が多い。しかも毎日がだるく、食欲もなく、何か食べても味がしないという辛い症状も続く。

実は、高齢の患者さんを長年診てきた私が、もっともなりたくないと恐れている病気がうつ病です。

各種の地域住民調査によると、うつ病は一般人口の3%程度の有病率ですが、65歳以上になると、それが5%に上がります。

高齢になればなるほど、心と身体の結びつきが強くなります。つまり、心が弱ると身体も弱り、逆に身体が弱ると心も弱るのです。高齢者は身体はもちろん、心にもダメージを受けることが増えます。

仕事を失うこと、伴侶や兄弟姉妹、長年の友人との死別、老化による自信の喪失などストレスフルなことが容赦なく押し寄せる。そのうえに、年を取るほど神経伝達物質が減るので、うつ病になりやすいわけです。

これほど高齢者に身近なうつ病ですが、その怖さはあまり知られていません。

うつ病になり食欲不振になると、高齢者は簡単に脱水症状を起こします。脱水すると血液中の水分が足りなくなって血液が濃くなるので、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなる。

脱水症状があると免疫機能も落ちてくるので、肺炎も起こりやすくなります。うつ病になって体力を落として亡くなってしまうこともめずらしくないのです。

また、先ほど言った身内や親友との死別など度重なる喪失体験から、孤立感を深めて自殺する高齢者も少なくありません。