朝日はデジタルシフトを強調するが…
日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期 2023年7月~12月平均」によると、朝日新聞の夕刊販売部数は約105万部。今年分の調査では、この105万部から北海道分と今回の3県分の休止が反映される。読者が夕刊購読を止める減少分も加味すると、100万部の大台を切ることは間違いない。
一方、ライバル紙とされる読売新聞社は、朝日よりも夕刊発行を維持している。同社サイトによると、北海道での一部や、朝日がやめる福岡や山口の一部、静岡、沖縄(福岡・東京からの空輸)でも、朝刊と夕刊の「セット版」を続けている。
これには部数1位として紙へのこだわりを見せる読売と、早めにデジタルシフトした朝日の経営戦略の差がありそうだ。しかし、後述するように朝日のデジタル戦略は成功しているとは言いがたい。
その前に改めて、新聞業界全体の部数推移を確認しておこう。
日本新聞協会が毎年10月時点でまとめている新聞発行部数によると、2021年・約3302万部→2022年・約3084万部→2023年・約2859万部。たった3年間で、443万部もなくなっている。
朝日の夕刊の部数減は先にチェックしたが、朝刊部数はどうなのだろうか。角田克社長が「発信に注力しています」とする朝日新聞デジタル(朝デジ)の有料会員数を共に確認したい。
紙の落ち込みをデジタルでカバーできていない
同社は原則4月と10月公表で、朝刊と朝デジ有料会員数などの数字を含む「朝日新聞メディア指標」を出している。
2023年3月の朝刊部数は376.1万部、同年3月末の朝デジ有料会員数は30.5万
2024年3月の朝刊部数は343.7万部、同年3月末の朝デジ有料会員数は30.6万
角田氏は「デジタルも紙も、どちらも朝日新聞」としているが、現状では紙の落ち込みをデジタルではカバーできていない。朝日新聞社は朝デジ以外にも、ハフポストやwithnewsなどグループを含めると多数のデジタルメディアを抱えるが、部数減を補うほど大きな収益源には育っていない。
こうした状況下で決算もパッとしない。
2023年3月期連結決算は、売上高が前年比2.0%減の2670億3100万円で、営業赤字が4億円超。2年ぶりの営業赤字となった。今年5月末に発表した2024年3月期連結決算では、57億8100万円の営業黒字を確保したものの、売上高は同0.8%増の2691億1600万円にとどまっている。
日本の上場企業で初めて5兆円を超える営業利益を出したトヨタ自動車に象徴されるように、5月には各社の好決算が発表された。こうした状況と比較すると、朝日新聞社の決算内容はいかにも寂しい。