注文を復唱しない店員に不安を覚えたが…

そこでやっと店員が捕まり注文をすることができたので、この後また店員に声をかけるのも煩わしいと思い、料理も一緒に注文してしまうことにした。

各々飲み物と料理を店員に伝える。ビール、レモンサワー、刺身、もつ煮込み、板わさ……注文の途中で僕はこの店員に少し気になるところがあった。こちらがした注文に対しての返事や復唱がまるでない。「ビール2つと、レモンサワー、あと刺身の盛り合わせと……」とこちらが言っているのをテーブルの横に立ち、無言で持っている端末に入力している。本当に注文が通っているのか不安になる接客である。

普段ならこの時点で「注文取れてますかね? 大丈夫ですか?」とそのまま聞いてしまうところなのだが、ここは大らかに、許そう。

そもそも注文時に商品名を復唱しなければいけないと誰が決めた? 他の店が復唱しているので、それが当たり前になってしまっていただけではないのか? この店員は注文を確認しなくても完璧に通す自信があるのだ。常識が自分にあると思うな、そう自分に言い聞かせながら注文を終えた。

居酒屋で働く男性
写真=iStock.com/mapo
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自分の顔の目の前に料理を通してきた

しばらく経ち、飲み物が運ばれてきたので、飲んで話しながら料理を待っていた。僕らの座っている席は壁側がソファー席、通路側が椅子の席といったよくある4人掛けのテーブル席で、壁側に友達が1人、通路側にもう1人の友達と僕が座っていた。

そして丁度僕と隣の友達との話が盛り上がっていた時のことである。料理を運んできた店員が、無言で僕とその友達の間に皿を通してテーブルに置いたのだ。僕らはいきなり顔の前を皿が横切ったのに驚いて、頭を後ろに引いた。

席は確実にテーブルの横側から皿を置ける作りになっている。通路を通る店員はこのほうが楽なのかもしれないが、話の最中に断りもなく皿が顔の前を通るのは気分の良いものではない。しかし、ここは大らかに、許そう。

僕がホール担当だったらお客さんの間に皿を通すようなことは絶対にしない。それくらいの気は回る。だが彼は僕じゃない。気の回らない、できないホール担当もいる。客をビクつかせても何とも思わない人だっているんだ。そう自分を落ち着かせた。