日本も経験したデフレと低成長が待っている

いま中国では「日本化」が進行しているという。むろん良い意味ではない。1990年代のバブル経済崩壊後の日本と、今日の中国には相違点もたくさんあり、このたとえが適切かどうかは微妙だ。それでものしかかる巨額債務と頭の痛い人口問題は、日本が経験したデフレと低成長の数十年を想起させるに充分だ。

地政学的には、中国が強力な大国として世界に影響力をふるい、権益を拡大しつづける未来像を修正する必要がある。もちろん経済が停滞したり、成長が鈍化していても、大きな力を持つ中国の存在が重要であることに変わりはない。それでも中国の支配力が落ちると、とりわけアジアで2つの変化が生まれるだろう。

ひとつは、中国の横暴に抵抗を示し、影響力をかわそうとする動きが活発化すること。そしてもうひとつは、中国がなりふりかまわず国家主義を押しだすことだ。東シナ海と南シナ海の隣接地域を掌握して、自国の弱さを補おうとするかもしれない。そうなると、制海権ほしさに台湾に侵攻を試みる危険性が増大する。

習近平とプーチンの共同声明が指し示すこと

中国は経済がつまずいて自信を喪失しており、対外的な傲慢さが薄れてきたと指摘する声もある。国内では経済政策に対する批判も見え隠れするし、習近平自身も汚職一掃に乗りだして、人民解放軍の高官を処分し、外交と防衛の担当閣僚を交代させている。

だがそれ以上に深刻なのは、ソブリン債と「一帯一路」経済圏のインフラ整備に湯水のごとく投入してきた資金が先細っていることだ。10年前、いや5年前でも、中国は世界の金融と外交に厳然と立ちはだかっていたが、その面影はすでにない。

2022年2月4日、習近平とロシアのウラジーミル・プーチンは首脳会談を行ない、共同声明を発表した。これは地政学的な意図で中国が行なった大胆な意思表明のひとつだ。それから3週間もしないうちに、ロシアはウクライナへの侵攻を開始した。

5000語におよぶこの声明は、西側諸国の悪政と偽善をあげつらい、ロシアと中国が戦略的パートナーであるという当たり前の話――深い信頼関係というより政略結婚ではあるが――を繰りかえすだけで、両国関係をどう展開するのかはまったく語られていなかった。