色あせるアメリカ、勢いを失う中国

いまでは米国の民主主義も心もとなく、ロシアのウクライナ侵攻を戦争犯罪と非難しながら、イスラエルのガザ攻撃は黙認するなど、ご都合主義との批判も後を絶たない。国際社会の法にもとづく秩序を守るという、米国の旗印は色あせるばかりだ。

そんな状況のなかで、ジョー・バイデン大統領は同盟国との関係を回復し、外交でも一貫した対応を見せて、先ごろ死去したマデレーン・オルブライト元国務長官のいう「欠くべからざる国」であることを、あらためて示してきた。それ自体は歓迎すべきだが、安心するのは早い。1年以内にすべてが再度くつがえる可能性もある。

米国を筆頭とする西洋の衰退は中国の決まり文句だ。米国の経済と技術は勢いが落ちていないが、政治と社会のほころびを見るとあながち嘘でもなさそうだ。この決まり文句でついになっているのが東洋の躍進だが、実はこちらもかなり怪しい。

10年ほど前、中国が向かうところ敵なしで驀進ばくしん中だったころ、私がかつて編集長をしていたエコノミスト誌がアンケートを実施した。中国の経済成長率を予測し、この国が他国を置きざりにして世界第1位になるのはいつか予測するというものだ。

いま同じアンケートをやったら、エコノミストたちはどんな回答を寄せるだろう。おそらく、中国が米国をしのぐ日は来ないという見解で一致するはずだ。中国はいま、経済成長の鈍化というわだちにはまっているように見える。

不動産バブルがはじけ、失業率が急上昇

その見解が正しいかどうかはともかく、中国が抱える経済的な弱点を映しだしていることはたしかだ。新型コロナ禍を抑えこむため、中国はテクノロジーも駆使して都市封鎖を実施し、国境を閉鎖するゼロコロナ政策に踏みきった。共産主義体制ならではの厳格な対応は最初のうちこそ賞賛されたが、持続は困難で、国内製ワクチンの効果が低いことも合わせて厳しい批判を浴びた。

2022年末、中国はとつぜんゼロコロナ政策を終了させる。それでも期待したほど消費が回復しなかったのは、ほかの要因に足をひっぱられたからだ。経済成長の3分の1を担っていた不動産取引と住宅建設が崩壊したこと、若年の出稼ぎ労働者の失業率が急上昇したことである。

不動産危機で生じた損失は、多くを国が引きうけざるをえない。それが国有銀行制度における債務帳消しであり、救済措置ということだ。さらに人口減少と高齢化という長期的な要因も考えると、2008年のリーマンショックのときとちがい、公共支出と借入で経済を底支えできる余地は限られている。

中国・広州で建設中の超高層ビル
写真=iStock.com/Zhonghui Bao
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