際立つグッチの独り負け、ヴィトンやエルメスは株価倍増

グッチの売り上げは、特にアジア太平洋地域での低迷が顕著だ。英BBCによると、グッチブランドの運営会社であるケリング(Kering)は3月、投資家に対し、2024年第1四半期のグッチの売り上げが前年同期比で20%減少する見込みであると警告していた。

グッチは中国からの売り上げが全体の3分の1以上を占めており、英ガーディアン紙は、中国市場の不調が大きな影響を与えていると指摘する。仏国際ニュース局のフランス24は、ケリング傘下のその他のブランド、すなわちイヴ・サンローランやバレンシアガも同様に、需要の低下に直面していると報じている。

香港のグッチのフラッグシップストア
写真=iStock.com/winhorse
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売り上げ低迷により、ケリングの株価は深刻な打撃を受けている。同局によると今年3月20日、ケリングの株価は一時15%以上下落し、最終的には11.9%減の375.20ユーロで取引を終えた。この下落により、ケリングの市場価値は1日にして約70億ユーロ(約1兆2000億円)が吹き飛んだ。

ケリングの株価は、2020年以降で約40%減少している。ビジネス・インサイダーは、これは競合他社であるLVMH(ルイ・ヴィトンなどを運営)やエルメスの株価がそれぞれ200%以上上昇していることを挙げ、こうした成功例とは対照的だと指摘する。

なぜグッチは凋落したのか

不調の原因は、黄金期を支えたクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ氏の退任だ。

ミケーレ氏が2015年にクリエイティブディレクターに就任して以来、グッチは一大ブームを巻き起こした。その独特なデザインと大胆なスタイルは、若者を中心に大きな支持を集め、売り上げを急増させた。

ミケーレ氏の得意とする手法に、ブランドロゴを強調する「ロゴマニア」がある。前掲の「ダブルGロゴ」や、特大のオーバーサイズロゴなども、こうした「ロゴマニア」の一例だ。

また、豊富な装飾、鮮やかな色彩、複雑なパターン、そして多様な素材を組み合わせる「マキシマリズム」の手法も彼一流のデザイン技法だ。

ミケーレ氏は2015年1月、グッチのクリエイティブディレクターに就任した。2015年秋冬のメンズコレクションが、彼の初のコレクションとなった。わずか5日間で準備されたものだったが、インパクトは抜群だった。イタリアで25年以上運営されている老舗デザインメディアのデザインブームは、「このブランド(グッチ)の立脚点を、180度転換させた」と称える。

天才デザイナーに導かれたグッチの黄金期

ミケーレ氏のデビューコレクションは、グッチがそれまで立脚点としてきた洗練されたミニマリズムから一転し、華やかでエキセントリックなスタイルを打ち出した。メンズコレクションの冒頭、ランウェイに真っ赤なリボンの付いたブラウスや、バラの刺繍が舞うシースルーのシャツが現れた瞬間、観客に強い衝撃を与えた。