不登校になる児童や生徒の数が過去最多を記録している。教育現場に何が起きているのか。ノンフィクション作家の石井光太さんは「子供たちはスマホで仕入れた情報からあちこちで“マウント合戦”をしている。そんな悪い表現からわが身を守るため、“キャラ化”する子供たちが増えている」という。学校の先生200人にインタビューし、今の子どもたちを取り巻く不都合な真実を描いた石井さんの著書『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)より紹介する――。

教室の「アツ」がすごい

学校に居心地の悪さを感じている子どもたちは、フリースクール、子ども食堂、無料塾などに比較的多く集まっている。こうしたところで子どもたちに「学校の何が嫌なのか」と尋ねると、おおよそ同じ言葉が返ってくる。

「教室の“アツ”がすごい」

アツとは、圧力、プレッシャーのことだ。教室の空気があまりに重苦しく、耐えられないほどだという意味だ。

現在の教室には、コンプライアンスの徹底により、あからさまないじめや体罰はなくなった。だが、それと入れ替わって出てきたのは次のような諸問題だ。

長い学校滞在時間、人の一面のみでの決めつけ、静かな学級崩壊、新たな校内暴力、褒められ中毒……。これらが子どもたちの足枷となって登校意欲を減退させる。

教室の空席
写真=iStock.com/smolaw11
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陰湿な表現で「カースト」を上げようとする

校長(東海、50代男性)は言う。

「教室では、子どもたちがそこかしこで“マウント合戦”をしています。今の子どもたちは、昔みたいに乱暴な言動で相手を抑圧しない代わりに、『受験しないヤツはクズ』とか『え、お前、スマホ持ってないの?』といった陰湿で間接的な表現で他人を貶めようとします。現代は、ゲーム、アプリ、アイドル、漫画などいろんなものが世の中に溢れていますよね。子どもたちは各々得意なところでマウント(優位性)を取ろうとするので、あっちへ行っても、こっちへ行っても、何かしらの圧力を加えられるのです」

どれだけ学校が協調を呼びかけたところで、子どもが“カースト”を作り、少しでも立場を上げようとするのはいつの時代も同じだ。

昔は、ガキ大将に象徴されるように、それが腕力などわかりやすい形で行われていた。先生はそんなガキ大将の頭をゴツンとやればよかった。

だが、今の子どもたちは大人に気づかれないように、言葉で他人を貶め、自らのカーストを上げようとする。先生にしてみれば、こうした状況を改善するのは簡単なことではないだろう。多忙な業務と並行しつつ、子どもたちの一言一句に耳をそばだて、介入していくことなど不可能に等しい。