「キャラ化」して自分を守る子どもたち

今の学校の教室で行われているマウント合戦。柔軟性のある子なら、うまく受け流せるかもしれないが、そうでない子は飛び交う言葉に傷つき、疲弊していく。

そんな子どもたちがわが身を守るためにするのが“キャラ化”だ。

先生(関西、40代女性)は言う。

「学校では個性を出そう、自己表現をしようと伝えています。それが主体性を築き上げていく上で大切なことだとされているのです。

しかし、傷つきやすい子どもたちは、生身の自分を表に出そうとしません。みんなの前で、個性を見せて自分なりの意見を言って、それを周りから否定されたらつらいじゃないですか。自分の全人格が否定されたようなショックを受ける。

だからどうするかっていうと、子どもたちは本当の自分ではなく、代わりの何かに扮するのです。最近はそれを“キャラ”と呼ぶ人もいますが、何かしらのキャラを演じるようになるのです。

たとえば、教室で何かのキャラに扮していたとしますよね。もし周りの人から馬鹿にされても、それはキャラが否定されただけで、自分がそうされたわけではないと考えられ、気持ち的に楽になるらしいのです」

女の子と男の子の顔マスク
写真=iStock.com/Paha_L
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合わなければ「別のキャラ」に変身する

子どもたちのキャラ化現象は、2009年に筑波大学の土井隆義教授が『キャラ化する/される子どもたち』(岩波ブックレット)で指摘している。先の先生によれば、あれから15年ほどが経ち、キャラのバリエーションが膨らんでいるという。

彼らが口にするキャラとしては、「陽キャ」「陰キャ」「キモキャラ」「天然キャラ」「いじられキャラ」「キラキラキャラ」「突っ込みキャラ」「真面目キャラ」「姉御キャラ」「癒しキャラ」などがある。

最近の子どもたちはキャラに合わせてあだ名を作るらしい。たとえば、「陰キャ」の子が日高太陽という名前だとちぐはぐな感じがする。そこで、みんなで話し合って「ゾゾ男」みたいなあだ名を決めるのだ。

このようにして、子どもたちは教室でそれぞれのキャラに扮して過ごす。陽キャはどこまでも陽キャに徹し、いじられキャラはどこまでもいじられキャラに徹する。

そこで多少傷つくことを言われても、これはゲームのようなものなのだと思えるので、痛みを緩和することができる。そしてどこかでうまくいかなくなれば、“キャラ変(キャラを変える)”して別のキャラに変身すればいい。

少し前に、この先生が担任していた小学6年のクラスでは、子どもたちがアニメのキャラに自分たちを投影し、お互いをそのキャラの名前で呼び合いながら、演技をするように接していたという。