欧州議会選で惨敗したマクロン大統領が解散を宣言

7月7日の総選挙の後、フランスがカオスに陥っている。これで今月末、オリンピックがつつがなく開催できるのだろうかというのが、私の単純な懸念だ。

あまり興味のなかった読者のために、少しおさらいをすると、そもそもの始まりは6月9日のEU欧州議会選挙。この選挙で、マクロン大統領率いる中道与党連合は得票率が15.2%にとどまり、“極右”と言われているマリーヌ・ル・ペン氏の「国民連合」の半分にも満たなかった。そこでマクロン氏は、まだ選挙の最終結果も出ないうちに議会の解散を宣言。一か八かの総選挙に舵を切ったわけだ。

ところが、急遽実施された6月30日の第1回目の投票では、マクロンの中道与党連合は、ル・ペン氏の「国民連合」だけでなく、左派連合の「新人民戦線」にまで追い抜かれて第3位に転落。7月7日の2度目の投票を目前に、まさに王手がかけられた状態に陥った。

フランス下院総選挙決選投票の結果を受けて、レピュブリック広場に集まって歓声を上げる左派連合の支持者たち=2024年7月7日、パリ
写真提供=共同通信社
フランス下院総選挙決選投票の結果を受けて、レピュブリック広場に集まって歓声を上げる左派連合の支持者たち=2024年7月7日、パリ

都知事選の日、最大級の番狂わせが起こった

フランスで国民の世論が真っ二つに割れるのは今に始まったことではないが、ル・ペン氏に対する激しい攻撃は、これまでずっと続いてきた右派と左派の切磋琢磨とは様相を異にする。「国民連合」は選挙で選ばれた公認の政党であるにもかかわらず、なぜか“極右で、反民主的で、危険な政党”であり、「絶対に政権に就かせてはいけない党」だった。しかし、事前の予想では、その危険な「国民連合」が圧倒的首位に立つと予想されていたのだ。

そこで、「新人民戦線」は急遽、全国で200人以上の候補者を引き揚げ、すべての選挙区で「国民連合」の対抗馬を一人に絞るという荒療治に出た。左派の票を一本化し、「国民連合」の躍進を止めようとしたのだ。

それが功を奏したのか、7月7日、最大級の番狂わせが起こった。左派連合の「新人民戦線」が勝利し、マクロン氏の中道与党連合が2位に浮上。そして、過半数を取るとまで言われていたル・ペン氏の「国民連合」が第3党に沈没した。

ただ、議席数で見ると、「新人民戦線」が184、マクロン氏の中道与党連合が166、ル・ペン氏の国民連合が143で、過半数の279議席を確保するためには、誰が政権を取るにせよ、連立交渉は必至だ。しかし、これがそう簡単に進むとは思えなかった。