ドライアイは現代病でもある

私は2015年から毎年、計1万2000人以上の患者さんの目の乾き具合を記録しています。

その結果、コロナ禍以降、涙の量は平均13%減少、目の保湿機能は平均23%低下していることがわかりました。

主な要因は、在宅勤務によるパソコン作業の増加や、スマホ時間の増加、環境の変化によるストレスだと考えられます。

仕事で疲れた目を抑えるビジネスマン
写真=iStock.com/Liubomyr Vorona
※写真はイメージです

さらに、マスク着用でも目が乾きやすくなっています。マスクの隙間から、息が“直接の風”となって目に当たるからです。

まばたきの回数が減り、涙が少ない状態が続くと目の表面がどんどん乾燥し、ドライアイになります。それによって涙の3つの層の状態が不安定になり、視力の低下も引き起こす。これが現代病ともいえる、ドライアイの正体です。

現代人の目は、乾きやすい状態にあるので、「意識的に目にうるおいを取り戻す=まばたきをする」必要があるのです。

要するにまばたきは、目に必要な涙を供給し、角膜の表面を自ら整えることができるセルフケアというわけです。

角膜が車のフロントガラスだとしたら、まぶたがワイパーで涙が洗浄液。まぶたをすることで、まぶたがワイパーのように目の表面をなぞって、涙を塗り広げてくれます。細かなごみもきれいに取り除き、適度なうるおいを与えて目の表面を整えてくれるため、「ものを見る力」も実際に高まります。

まばたきは実用視力を改善する

「え? ホント?」と驚いた方もいるでしょう。

ほんとうです。まばたきで、「実用視力」を最大限に高めることができるのです。

視力には、「瞬間視力」と「実用視力」の2種類があります。

「瞬間視力」は私の造語です。眼科検診など「Cマーク」の切れ目を瞬間的に見分ける方法で計るのが瞬間視力。いわば、ものを見る能力の最大限の努力値です。

一方、より専門的な機械で60秒、継続的な検査で測るのが「実用視力」。瞬間視力よりも計測時間が長いため、その人が日常生活で感じている見え方により近い結果が得られます。

瞬間視力は、一時的になら簡単に上がります。

目を細めると、遠くが少し見えるはずです。それは「球面収差きゅうめんしゅうさ」、つまり視線の中心と周辺での光のばらつきが減るからで、目を細めて視野が狭まることで焦点が絞られ、見えやすくなる現象です。

しかし、それはその場しのぎでしかありませんし、いつも目を細めて生活するわけにもいかないでしょう。

重要なのは、「安定して、よりよく見る」ための視力、すなわち実用視力。まばたきは、その実用視力を守り、改善してくれるのです。