「運とツキ」を呼び込むには、勝ちがあるうちに、「次の一手」を打ち、勝ち続けていくことが重要です。90年には当時セゾングループだった西友の食品売り場で、日本初のサインレス取引を始めました。02年にはポイントプログラムの有効期限を廃止した「永久不滅ポイント」を開始。10年には米アメリカン・エキスプレスと3年間の交渉の末、券面にアメリカン・エキスプレスの象徴である「センチュリオン(古代ローマの百人隊長)」がデザインされた提携カードを世界で初めて発行しました。80年代以降、わが国のカード業界のイノベーションは、ほとんどが私たちでやってきたという自負があります。

ニュートンの「万有引力の法則」をご存じでしょう。地球上のあらゆるものはこの法則から逃れられません。同じように、国家、企業、個人にとっても絶対的な法則があります。それが「運とツキの法則」です。

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【「イノベーション」を作り続けてきた!】※注/以後、出光興産、静岡銀行、りそなHD、高島屋、ヤマダ電機、大和ハウス工業、山口FGともカード発行を目的にする合弁会社を設立。

私はビジネスの世界で、「運とツキ」を呼び込んできましたが、それは勝負事によって磨いてきたものです。たとえば麻雀です。麻雀というゲームは生身の4人が顔を突き合わせて牌を打ち合うわけで、迫真の駆け引きを学べます。私は小学生の頃から麻雀、花札、将棋などを家族でしょっちゅうやっていました。麻雀歴は50年以上になります。その経験からいうと、運とツキは万有引力の法則と同様に、人に働きかけるもので、あっちの人、こっちの人と移り変わっていくものです。

では、どんなときに運とツキが変わるのか。多くはミスがあったときです。麻雀で、いい手がきたのにあがれなかった、振り込んではいけない局面なのに振り込んでしまった。間違いなく運とツキが逃げていきます。つまり、自分に運とツキがきているのに、それを逃すと運とツキは逃げ、相手がミスをすると自分に戻ってくるのです。差が広がって挽回不可能とならないうちに手を打たねばなりません。

相手に傾きかかった流れを引き戻す迫力は、「勝ちたい」という漠然とした思いではなく、「勝てる」という強い思い込みでしかもたらされません。根拠などなくてもいい。ワクワク、生き生きしているから、より一層の努力ができる。だから、より強い運とツキがついてくるのです。

スポーツの世界にも同じことがいえます。10年のサッカーW杯で日本代表は大活躍をしました。「ベスト16は実力以上、たまたまツイていたのだ」などという人もいますが、私はそうは思いません。実力以上に彼らの気迫がすさまじかった。その気迫が試合の流れを支配する力、つまり運とツキに働きかけたのだと思います。選手たちの「勝てる」という思いの強さが、運とツキを呼んだのです。

「勝負の分かれ目」という言葉がありますね。スポーツならば、「あのプレーで勝負の行方が決まった」という瞬間です。そんなとき、選手はノリにノっています。自分は今日はツイていると本能的に感じている。だから普段できないような素晴らしいプレーができてしまうことがあるのです。

そしてツイているときに「勝ちきる」ことが重要です。サッカーや野球では、途中で優劣が逆転することを「流れが変わる」と表現しています。何らかのミスで流れが変わってしまう。途中まで優勢の状態にいると、安心してしまい、努力を怠り、油断してしまう。企業経営も同様です。どうしても業績が上向くと安心して、その安心が慢心に変わっていきます。そして限りなく傲慢になり、相手を見下してしまう。これが結局は企業の衰退を招いてしまうことになります。