「仕事と介護の両立」は会社にとっても重要な問題
また、従業員が離職することなく仕事と介護を両立するためには、会社側の支援も大切です。離職者の増加や従業員のパフォーマンスの低下は、企業にとって大きな痛手となります。
「制度はあるが、活用されていない」「社内でアンケート調査を行ったが、本当のニーズが見えてこない」など、実態に即した対策が立てられていないことも少なくないのではないでしょうか。大企業でさえ、約5~6割は従業員の現時点の介護の状況を把握できておらず、かつ約7割が今後も従業員に対して介護が必要となり得る親族の状況を把握する予定はないと言われています[経済産業省「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)報告書」(日本総合研究所作成)]。
法律上義務づけられた制度や措置以外の自主的な取り組みとして、従業員向けのセミナーの実施や、社内外の専門窓口を設置している企業は1割程度と一部の企業に限られているのが実態です。人事評価への影響や同僚への負担を懸念して、従業員が介護していることを隠してしまうこともあります。介護によるストレスや疲れが蓄積した結果、通勤中や業務中の事故や負傷に繋がりかねず、問題が顕在化した時には労災として企業に大きなダメージとなることも考えられます。
厚生労働省は両立支援ガイドを公開している
厚生労働省では、両立支援ガイドを作成したり、中小企業向けの介護支援プラン導入のサポートやセミナーを無料で実施したりしています。介護の問題は誰もが直面する可能性のあるものです。制度の整備はもちろんのこと、「地方に住んでいる両親の介護をしなければならなくなった」「一人暮らしをしている親を抱え、できると思っていたけれど、仕事との両立が体力的にも厳しい」など、同じような立場の者同士が情報交換をしたり悩みを共有したりできるコミュニケーションの場があることが望ましいです。社内SNSを活用しても良いでしょう。ますます進む高齢化社会に向けて、介護者となりうる方も会社側も事前に介護への備えを進められると良いですね。