夫の背中を強く押した同級生妻の「漢気ある言葉」

中学校の同級生だった妻とは結婚して10年。むしろ妻が決断を促した。

「サラリーマンの僕は生き生きしてない、って見えたようです。付き合いが長いんで、考え方とか価値観とか、僕のことはよく理解してくれていました」

とはいえ、家族からしたら安定収入がなくなるのは不安でしかないはずだ。

「妻は覚悟をしたと思います。『我慢するより、やりたいことに挑戦したほうがいい。やったらいいじゃん。ダメでも、何をやっても生きていかれるんだから』って」

そう力強く背中を押され、心は決まった。

妻もかつては会社員だったが、今は子育て相談や起業サポートなどを業務とする個人事業を営んでいる。数カ月間、週に1回のペースの試験的な営業を経て、6月上旬に『Kento’s Burger』を開店した。

建部の作るハンバーガーのこだわりは肉だ。一般的にはひき肉を使うが、ステーキ肉を使っていた『チェンジイズバーガー』で衝撃を受けた。その味に自分なりに近づこうと試行錯誤している。

ハンバーガー
撮影=清水岳志
ひき肉ではないパティは肉の食感が直接伝わってくる

野球も、長打力や足の速さなど個性がなければ試合で起用されない。食べ物も尖っていなければ生き残れない。そんな思いが建部の中にある。

肉の仕込みは20~30cmのステーキ肉の塊から脂を取り除いて、筋に注意しながら食べやすく切り分ける。根気のいる仕事で長いときで4時間以上かけて直径数センチの円形に成型する。

もう一つの特徴は、妻がリンゴ(サンフジ)を使って煮込むリンゴジャムが塗られていることだ。夫婦合作の一押しが、「アップルジャムベーコンチーズバーガー」だ。

リンゴジャム
撮影=清水岳志
肉汁の旨味とリンゴジャムの甘さのマッチングも新鮮

肉はアメリカ産ステーキ肉を仕入れ、トマト、レタスは妻の知り合いの青果店から新鮮なものを買っている。バンズは日野の老舗パン屋に特注するなど地元食材もこだわりだ。

店舗はカウンター15席、2人掛けテーブル席が2つ。店の切り盛りは今のところ、自分と妻の2人だ。

肉も野菜もバンズもランクを言ったらきりがない。高級素材を使えばそれだけコストがかかりすぎて薄利になる。バランスがなんとも難しい。近々、月次決算をだして、これからの経営戦略をじっくり練ることになる。