自分と妻が厨房で「打席に立つ姿」を小さなわが子3人に見せた

ハンバーガー店経営には調理師免許が不要なケースもあり、比較的開業のハードルは低いと言われるが、逆に言えば、競合が多く、消える店も多いということだろう。

「ハンバーガーが好き」

建部は取材中、何回も同じフレーズを口にした。調理業務の経験ゼロだから、これが拠り所であり、強みだ。その気持ちが揺るがないからまっすぐに挑戦もできる。

「子供が3人(7、6、4歳)いますが、もし、この独立が結果的に芳しくなくなったとしても、そのしくじるところを見せたい気持ちもあります。やりたいことに挑戦して、ダメだったらまた挑戦すればいい。そんなオヤジの背中を見せてもいいかな(笑)」

力を抜いて滑り出して、ここまでは順調だ。

「楽しさと難しさの両方を実感しています。もちろん盛況な店にしたいです。そこの熱はあります。まず、品質と利益、それと店の経営を妻と楽しみながら、というところを一番、大切にして模索してます」

厨房で作業をする建部さん
撮影=清水岳志
厨房で作業をする建部さん。営業は10~16時まで(ラストオーダーは15時30分)

野球をやめてそろそろ1年。180度、想像できないことをやっていて、さまざまな人生経験を積んだ。今後、何をしていくうえでも、マイナスにはならない、という。

野球の経験はハンバーガー経営に何か生きているのだろうか。

「野球は勝つために相手を研究して、練習をして準備します。ハンバーガー屋もお客さんが美味しいといって食べてくれるように、研究して仕込んで本番の営業時間に向かう。そこは一緒です」

かつての“代打の神様”のスピリットで、このチャンスを絶対生かすという入魂の日々だ。

子供たちは「(東京)ガスの野球、見たいな」ということがあるそうだ。野球選手をやめてハンバーガー店をやることは伝えてある。

折に触れ、子供たちを店に連れて行って、自分たち親が正々堂々と打席に立って勝負している姿を見せている。

「親の仕事はハンバーガー屋、ということを認識してもらえるように頑張ってます」

(文中一部敬称略)

 

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