ケネディクスの生存者利益に懸けた投資家たち
こんなことを何週間も続けた。そして、いよいよ新株の募集開始の日が来た。果たして潰れそうな会社の新株発行に予約は入るのか?
実は本プロジェクトを開始した頃、ケネディクスの生存者利益に懸けてみようかという投資家が2社現れた。ボストンの巨大ファンド、フィデリティとニューヨークの名門ファンドのオッペンハイマーだった。この2社で新規発行予定株式数の40%近くを引き受ける用意があるという。米国には懐が深い投資家がいるのだなと驚いた。この有名な2社が意向を表明してくれれば、他の世界の投資家もついてきてくれる可能性が高まる。平常時からまめにIR(投資家説明)をやっておけば、非常時に役に立つこともあるのだなと今にして思う。
「プロジェクト・リンドバーグ」は180億円を調達
もう二人ほど忘れられない投資家がいる。一人はジュネーブのフィリップ・ジャブレというヘッジファンド。ジャブレ氏は額面で40億円分の転換社債を持っていた。もちろん潰れそうな会社の社債を額面の5分の1くらいの安値で取得しているはず。ジャブレ氏は電話の向こうで「もし額面通りに償還されるのであれば、償還された資金の半分を新株の購入資金に回してもいいよ」と言った。これはとてもラッキーだった。
もう一人はその昔、大阪ナスダック・ジャパン上場の頃に60%の株式を取得していたタワー投資顧問の清原達郎氏だ。彼は株式投資家なので社債は保有していなかったが、「ケネディクスが新株を発行して、生存者利益を貪るのなら大口で買ってもいいよ」と大量発注してくれた。欧米だけでなく、日本にもこういう投資家がいるのだ。
かくして「プロジェクト・リンドバーグ」は奇跡ともいえる成功を収めた。調達したお金は何と180億円に達していた。もちろん全額社債償還のために使ったので、ケネディクスにとっての真水とはならなかったが。