続いてSMBCが140億円の巨額融資
「プロジェクト・リンドバーグ」が見事に成功し、2009年12月の社債の償還を奇跡的に乗り越えられたことで、銀行が動き出した。三井住友銀行が貸し出しを増やしてくれたのだ。140億円とケネディクスにとって驚くべき巨額の融資だった。
これは「資本増強なきところに金融支援はあり得ない」ということに尽きる。毎月のようにキャッシュが流出していき、三井住友銀行の担当者とも土日も出勤して資金繰りや貸し増しの相談を重ねたが、新株を発行できて資本増強を成し遂げたのを見届けた上で支援を決めてくれたのだ。結局はそういうことだったのだ。銀行のロジックがようやくわかった。
しかし、だからといって銀行はただでお金を貸してくれるわけではない。当然、担保は必要となるし、翌年にはまた次の社債の償還期限が来て資金不足になるのは目に見えていた。三井住友銀行は、ケネディクスのクラウンジュエリーといえるリートの運用子会社KDRMと私募ファンドの運用子会社のKDAの株を保有する持ち株会社KDAMを新規につくり、その株式の15%をSMBC系の会社に保有させることなどを融資の条件として提示してきた。もちろん受諾せざるを得なかった。
ケネディクスという会社を三井住友銀行に搦め取られたような気がしないでもなかったが、これでいいのだと思った。なぜなら、これほどまで銀行が関与してくるというのは、ケネディクスを生かすことを決めたということにほかならないからだった。
「絶対にヤリでっせ。攻めの案件です」
しかし、こんな難しい巨額の融資を銀行がおいそれと通してくれるものではない。実はこれには裏話がある。「誠実でウソだけはつかない」とケネディクスを評価してくれ、応援団になってくれていた同行の清水喜彦常務執行役員が動いてくれていたのだ。
清水常務執行役員は当時、監査部担当役員であり融資の可否を判断する営業案件には本来、口を出せる立場ではなかった。それでも清水さんはやってくれたのだ。
どのようにしたかというと、それは“連れション”だったそうだ。三井住友銀行では旧住友銀行の慣習にあわせ役員室の扉を閉めない決まりになっていたので、部屋の中から外の廊下を誰が歩いているかが一目でわかるのだ。経営会議の数日前、廊下に奥正之頭取の姿が見えた。奥頭取がトイレに行くのだと思った清水さんは後を追い、自分もトイレに入った。そして並んで用を足しながら奥頭取に「ケネディクスへの140億円の融資、あれ絶対にヤリでっせ。攻めの案件です」と言ってくれたのだった。
こうしてケネディクスへの融資案件は無事、三井住友銀行の経営会議を通過した。つくづくケネディクスは強運な会社だと思った。