社債を持っている投資家に「揺さぶり」をかける
問題は、この見事に描かれた絵が本当に現実のものとなるのかということだった。ケネディクスでは3つのチームを立ち上げ、世界中を飛び回って必死に取り組んだ。1番目と2番目のチームは資金に余裕のある投資家を相手に「日本の不動産ファンドの運用会社はほぼ潰れて、ケネディクスだけが残っています。新株を引き受けてくれれば生存者利得を得られますよ」と説得した。
3番目のチームはすでに社債を持っている投資家にこう揺さぶりをかけた。「新株を売って金をつくり、社債を償還します。足りない分は新しい社債と交換してください。もし了承いただけないと会社が潰れて、今お持ちの社債はゼロ円になってしまいます」。
転換社債というのはある意味では怖い商品だ。保有したプロの投資家たちの中にはこれを普通社債部分とオプショナリティ部分(株式に転換できるかもしれない権利)に分離して、それぞれを転売して商売をする人もたくさんいる。持ち主が次々と変わり、世界で誰が保有しているのかわからなくなる。UBS証券はこれを丹念に調べ上げた。
その日の予定を全部キャンセルして高知へ
ある時、「四国の地銀が社債部分だけを保有しているが、どうすればいいかと思案している」という情報を入手したため、その日の予定を全部キャンセルして坪山氏と二人で高知に飛んだこともある。その地銀の担当者にはこう申し入れた。
「あなたが保有する社債ですが、今回のエクスチェンジ・オファーに応じてほしいのです。その社債をアレンジした証券会社に頼んで日本国債と交換してもらうことにするので、いったん応じてください。そうすればあなたの元本は確保できます」
また、中堅証券会社が転換社債を額面の半額で取得し、20%の利益を載せて顧客の個人投資家に転売したとの情報を入手。同社の支店長会議に急遽出席させてもらい、状況を詳細に説明して自分たちが売った顧客に今回のエクスチェンジ・オファー・スキームに同意するよう説得してくれと懇願した。