1992年、日本で最初の本を出した私は、95年に本の町というイメージの強い神保町に小さな事務所を構えた。週に何回も周辺の書店を回り、どんな本が出版され、読者がどんなテーマに関心をもっているのかを皮膚感覚として培おうと努めていた。実際、買いたい本はたくさんあり、事務所はあっという間に本の山に占領された。

しかし、昨年は一度も神保町の書店を回らなかったのだ。事務所を構えてから15年、こんなことははじめてだった。