日本では使い道が極端に限られる
このようなガジェットは日本では十分に使えるのだろうか。某家電量販店旗艦店のスーツケースコーナーを見てみると、無数のスーツケースが飾られる中、ひっそりとガラスのショーケースの中で展示されている電動スーツケースがあった。乗ることもできるし追尾機能もある製品だ。
店員に聞いてみると、やはり「公道では利用できないので注意が必要です」と説明された。加えて「バッテリーが入っているため、行き先で載せられるのかまずは航空会社に尋ねたほうがいいですね」という。便利な代わりの代償もある。
さらにこう説明された。
「例えばイベント会場で許可を取っていれば、そうした会場で動かすことはできます。しかし許可を取ったとしても、人にぶつかるリスクはどうしてもありますね」
日本で使うには場所を選ぶという認識のようだ。披露できれば注目が集まる製品だが、使用には許可がいるなどクセのある製品であるのは間違いない。
使用環境を考慮しないまま海外展開
このようにどうにも使える場所が限られていそうな「走るハイテクスーツケース」だが、それでも中国企業はどうして日本で売ろうとするのか。
近年スマートフォンにとどまらず中国企業発のさまざまなハイテク製品が日本向けに売られている。加えて中国人が日本で興したハイテクベンチャー企業もある。というのも中国ではハイテク製品が売れなくなってきているのだ。
スマートフォンにしても性能が既に十分なので買い替える頻度は低くなり、シャオミをはじめとしたスマートフォンメーカーがより売り上げを伸ばそうと高価格なスマートフォンを出しても消費者は買い替えなくなっている。あまつさえ景気も悪いという記事をさまざまな媒体で見るようになり、若者が消費を抑える傾向にある。
ハイテク製品を作る企業は、高価で高性能な製品を売ろうとするが、中国市場でだけ売って儲けるのは難しいと感じてきている。そこで日本を含む海外に活路を見いだしている。
先に中国でニーズがあり中国向けに売った商品を、さらに海外でも売ろうとするわけだ。ところが中国の環境と日本の環境が全く違うため、中国企業が売りにしようとするシチュエーションがまるで使えないケースがある。今回の電動スーツケースはまさにその典型例といえる。