資産価値がなければ「相続放棄」という方法がある
では、家を残された者はどうすればいいのだろうか。まず考えられる方法の一つは素直に相続することだ。
もちろん、相続人が複数いる場合は調整が必要だが、残された家に資産価値があれば素直に相続すれば良い。その上で、自分で住むなり、建て替えるなり、売却するなり、貸すなりすれば良い。
最近では、売れもせず、貸すこともできない不動産が増えているが、まだまだ資産価値が残っている地域も多い。
では、残された家に資産価値がない場合は、どうすればいいのだろうか。まず、考えられる方法は相続放棄だ。
残された財産が現預金等を含めてマイナスか、非常に少額の場合は、相続放棄すれば、現預金等はもらえないが、残された家に対する責任はなくなる。
相続放棄は、相続人全員が合意する必要はなく、個々人で判断でき、相続人全員が相続放棄すれば、その家は国に帰属することになる。ただし、相続人全員が相続放棄した場合は、弁護士や司法書士などを「相続財産管理人」とする申請を家庭裁判所で行う必要があり、一定の費用と時間がかかることには注意が必要だ。
2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」
残された財産に現預金がある程度あり、現預金等は欲しいが、家だけは欲しくないという場合は、2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法がある。
この制度を利用するには、建物を自費で取り壊し、土壌汚染や崖などがない、権利関係に争いがない、担保権が設定されていないといった条件を満たす必要があり、審査手数料と10年分の土地管理費相当額の負担金を支払う必要がある。
負担金は、市街地の200m2程度の宅地なら80万円程度とされており、解体費用等を考慮すれば、相続した現預金などがおおむね300万円以上あれば、相続放棄よりもこちらの制度を利用するほうが有利になる可能性がある。
いずれにしても、残された家の固定資産税を子どもたちが払い続け、管理を続けなければならないということはなくなっているのだから、家を残すことを過度に心配する必要はないだろう。