走っている電車の数で勝負
まず最初に、桜庭実紀さん(久慈高校2年)に伝えなくてはいけない。桜庭さんの名前は、他の取材先で何度か聞いているのです。
「え? え? どういうことですか?」
久慈市は北緯40度。それを横に回していくと……。
「あ、ロンドンとニューヨークあります」
……という久慈のアピール、そのインパクトがすごかったと聞きました。ついたあだなが「田舎っぺちゃん」だと。
「ああっ、気仙沼の阿部愛里ちゃんですか! 愛里ちゃんとすごい仲良くなって、一緒にご飯を食べてたときに、どっちが田舎かっていう対決になったんですよ」
対決、何で戦ったんですか。
「走ってる電車の数です。何両で来るか、せえので言おうっていって、あっち3両だったんですよ。こっちは1両(笑)。しかも乗ってる人1人みたいな。そのあとに『田舎っぺ同盟』をつくろうっていう話になって、"我こそは田舎"みたいなのが20人くらい来たんですけど、わたしや愛里ちゃんからすると、けっこうそれは都会で(笑)、結局、田舎っぺ同盟は、福島の子とか入って5人で結成しました」
阿部さんは「自分の住んでるところを誇らしげに語る姿が、すごく印象深くて」と言っていました。
桜庭「参加者で、たぶんいちばん北に住んでるんで、ちょっと自信を持っていこうかと思いまして(笑)」
小室「アピール、ありがとう(笑)」
関口「たしかに、久慈、端っこだもんね」
桜庭「うん、すごい端っこ感あります。八戸に上がってくのに1時間かかるし、南に下がっていっても『宮古まだ?』みたいな。盛岡への直通電車ないですし」
では、ここから本題に入ります。桜庭さんは、将来何屋さんになりたいですか。
「『TOMODACHI〜』に参加した人は文系の人が多くて、ちょっとびっくりされたんですけど、臨床検査技師になりたいって考えてます。病院に勤めてて、患者から採取した血液やおしっことかから、病気の原因とかを調べる職業です」
臨床検査技師は国家資格。受験資格の中に「大学で医学か歯学の正規の課程を修めて卒業した者」とある。血液や尿などの生化学的検査だけでなく、脳波や心電図検査も担当する。桜庭さんが、この仕事をやりたいと思ったきっかけは。
「最初になりたかったのは司法解剖医なんですけど、あれはすごい勉強ができなきゃいけないし、ちょっと難しいなと思って。だけど、どうしても医療系の職業に就きたくて。でも看護師っていう夢は、ちょっとなくて。で、うちのお姉ちゃんが、今、理学療法士を目指してて、じゃあ理学療法士じゃないのにしようって思って(笑)、ドラマ『チーム・バチスタの栄光』を観てて、それに出てくる鳴海先生が臨床検査技師で——ほんとは病理医なんですけど、臨床検査技師みたいなこともやってて、そういうの楽しいなって思うようになったんです。けど、いちばんなりたかったのは司法解剖医です」
現役の医者でもある作家・海堂尊のデビュー作だ。鳴海涼は重要な脇役。2008(平成20)年放映のテレビドラマでは芸人の宮川大輔が演じた。病理医とは、患者と直接接する臨床医と異なり、臨床医が上げてきた情報から病気の内容を判断する専門医。医師免許取得後に5年以上病理学研修を行い、日本病理学会が実施する専門医試験に合格する必要がある。司法解剖医は、刑事訴訟法に基づき、捜査当局の嘱託を受けて死体の解剖を行う医者の仕事の名称で、資格名称ではない。
さて、桜庭さん、最初になりたかった司法解剖医、そのきっかけは何だったんですか。
(明日に続く)