誤解:アイデアはみんなに伝えるべき

「自分のアイデアを、誰にも伝えたくない」という人は少ないと思います。ほとんどのアイデアは、できるだけ多くの人に知ってほしい、共感してほしいと思って発想されるものです。しかし、ここに大きなわなが潜んでいます。

みんなに伝えようとして生まれたアイデアは、誰にも伝わらない

私はアイデアを発想するとき、いつも特定の「誰か」を想像するようにしています。なぜなら、たった1人の誰かを生み出したいアイデアの対象として想像することにより、アイデアがよりリアルに、熱を帯びるからです。生きたアイデアと言ってもいいかもしれません。

わかりやすい例を出してみましょう。

あなたがチョコレートメーカーの宣伝担当者だとします。バレンタインデーの2月14日に新聞広告を出稿することになりました。どのようなキャッチコピーでターゲットに訴えかけますか。

義理チョコで人間関係を作ろう。

どうでしょう。一見正しいメッセージに見えるかもしれません。「義理チョコをたくさん配れば、上司や同僚との関係が良くなり人間関係がうまくいく、仕事がうまくいく」といったメリットを訴える提案型のコピーにも見えるかもしれません。

箱の中のハート型のチョコレートキャンディー
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです

しかし、考えてみてください。

実際に自分がチョコレートを買う消費者だとして、義理チョコくらいで人間関係が構築できると思うでしょうか。人間関係の構築は一筋縄ではいきません。楽しい時間や辛い時間、悔しい時間などをともにしてこそ、できあがるものです。

自分が人間関係を構築したい特定の誰かを思い浮かべて書いていたら、こういう浅いキャッチコピーは生まれないはずです。つまり、このキャッチコピーは、みんなに伝えようとした誰の顔も思い浮かべずに書かれたものと言えます。

一方で、次のようなキャッチコピーだったらどんな印象を受けるでしょう。