60代以降の人生を楽しむには何を心掛ければいいか。医師の和田秀樹さんは「自分の常識が一般常識だと思うから、日本人の生きかたは変になる。例えば、情だとか義理や体面だとか、おかしな理由で離婚に踏み切れないのは、日本人くらいだ。アメリカは、不倫にはうるさいけれど、愛が冷めれば、それだけでみんな離婚し、ヨーロッパでは、パートナーをころころ替えることさえも当たり前である」という――。

※本稿は、和田秀樹『死ぬまでひとり暮らし 死ぬときに後悔しないために読む本』(興陽館)の一部を再編集したものです。

離婚届と指輪をさす人の手
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「労働に生きがいを感じる日本人」は世界からみて変だ

欧米の高齢者は、日本人よりも老後を楽しんでいます。

特にヨーロッパは60歳ともなれば、労働から解放され自由になるという考えなので「これからが本当の人生だ」とばかりに、旅行や遊びに精を出す高齢者が多いものです。

そもそも、海外の人は、日本人のように、労働に生きがいを感じていません。だいたいの人は「働いているときの自分はかりそめの自分」と思い、食い扶持のために働いています。彼らにとっては、17時30分以降の自分が本当の自分なのです。

定年制度はドイツのビスマルクが平均寿命まで生きた人に労働から解放してやろうと考え出したことなので、ヨーロッパの人には、これまで働いてきたのだから、これからは働かなくても食べられるのだという文化が根付いているのでしょう。

また、海外の人は、日本のように同僚を肩書きでは呼びません。「トム」「スティーブ」などとファーストネームで呼ぶ文化なので、定年後に関係性が劇的に変わったりもしません。このことも、老後を楽しめる理由の一つだといえます。

婚姻制度が日本のように複雑ではないことも、自由な老後を過ごすには重要なようです。アメリカは、不倫にはうるさいけれど、愛が冷めれば、それだけでみんな離婚します。ヨーロッパでは、パートナーをころころ替えることさえも、当たり前です。

情だとか義理や体面だとか、おかしな理由で離婚に踏み切れないのは、日本人くらいなものなのです。

自分の常識が一般常識だと思うから、日本人の生きかたは変になるのだと思います。