「公私の区別をつける」なら法人化は悪くない

しかし、厚生年金は驚くほど高い。

「報酬50万円の場合、事業主負担を含み月額9万1500円です。会社員のように給料を得ている方なら、事業主と労使折半のため、月収50万円の人でも厚生年金は半分の4万5000円で済んでいるでしょう。事業主負担分まで自分の懐から出るとなると高く感じますが、年金は掛け捨てではありません。厚生年金なら国民年金のみよりも将来の年金が増えるのですから、老後の蓄えととらえるのも一案だと思います」(内藤氏)

社会保険料以外の点では、マイクロ法人を設立する際には設立費用(合同会社であれば7万5000円程度)や、決算報告書などを税理士に依頼するためのコストが一般的に月に数万円程度はかかる。必ず税理士に依頼しなければならないわけではないが、個人事業主の立場でいるよりもはるかに事務手続きが煩雑で、提出書類も多くなるため、個人で行うのは簡単ではない。バーチャルオフィスなどから住所を借りる場合は、利用料が少なくとも月に数千円は必要だろう。

そういったコストや手間は増えるものの、内藤氏は「今後その仕事にしっかり取り組んでいくなら、法人化するのはお勧め」という。

「自分の給料を自分で決めて、それに伴った社会保険料を事業主分も含めて払う。公私の区別がつき、仕事を続けていく覚悟も定まります」

確定申告書と電卓
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです

支払いばかりを考えると憂鬱になるけれど…

改めて、社会保険料を下げる手段を考える時、自身の仕事の向き合い方を見直す契機にもなると思う。

第4回で紹介したような「退職後」なら今後の人生の方向性を考えなければならないし、第5回に記した減額制度の適用になるほど経済的に困窮するなら別の仕事か、何か収入が増えることを始めたほうがいい。

今回の「法人化をするかどうか」については、ひとつの業種を深く掘り下げるタイプであれば、私は個人事業主のまま国保組合などを利用するのが向いているように感じた。一方でアイデアが豊富で複数の事業をもつ活発な人なら、そのひとつを法人化して社会保険に加入し、手広くやっていくのもいい。

もちろん会社員も、勤務先が副業を禁止していなければ可能性がある。今の時代ならYouTuberやコンサルティング、オンライン販売など、スキルを活かした法人化もやりやすい。支払いばかりを考えると憂鬱になるが、あわせて新たに収入を得る分野も、いつも考えておきたい。

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