日本は国民感情も企業も利上げを容認している⁉

【パックン】株を持っているエミンさんには悪くない話だね。

【エミン】僕は金融側の人だからね。株高になることに対してまったく問題はないですよ。ただ、エコノミストとして分析していて単純に思うのは、株高を維持するために一般国民を犠牲にしているということです。それは日本も一緒です。

【パックン】日本はどうだろう? 日本の政治家は、国民の生活より株価を気にしているかなあ。

【エミン】まあ、日本の政治家は何も考えてないかもしれないけど。

【パックン】(笑)。

【エミン】日本は「とにかく金利を上げるな」というのが政治のスタンス。自分たちが関係している企業が金利上昇をものすごく嫌っているからね。その意味では政治家のスタンスは明確だけど、ここにきてあまりにも円安になったから、ビジネス界からもさすがに苦言が出始めている。

経団連も中小企業の団体も円安に異論を唱えているでしょ。それで少し、政治のスタンスも変わってきています。いまは少し金利を上げてでも円安を抑えろといった雰囲気にはなってきているんじゃないかな。

【パックン】ということは、日本はアメリカと違って国民感情も、企業も金利希望も汲み取っていると。アメリカは、メインストリートとウォールストリートで意見が分かれていますけど、日本は両方一致するということですね。

株の保有率の低い日本は株高の恩恵を受けにくい

【エミン】いや。日本はアメリカと違って株式の保有率が10%しかないから、株高の恩恵を受けている人が少ないということです。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(2024年3月調査)によると、前年対比で「景気が良くなった」と思っている人は約10%しかいません。

株を保有している人は株高の恩恵で「景気が良くなった」と思っているけれど、そうじゃない人たちは「景気が悪くなった」と思っているのです。それに対して、アメリカは多くの人が株を持っているから。

【パックン】6割は持っていますね。ただ、実際に株価が高く、失業率が低くて、実質賃金もGPDも増えているのに、アメリカの調査会社の「ザ・ハリス・ポール」の世論調査によると、55%の人がアメリカは不景気、リセッションだと思っているそうです。アメリカ人も日本人も実体経済に不満があるんですね。

【エミン】それはおそらく株価だけが理由じゃないね。

【パックン】政治的な理由で答えている人もいるし。

【エミン】いるでしょうね。ただ日本では株を持っていない人は明確に「景気が良くなっていない」と答えているから、株高になっても多くの国民は恩恵を受けていない。もしくはそれを感じていない。