TBS系の特番「巷のウワサ大検証!それって実際どうなの会」(6月3日放送)が、3月末で終了した日本テレビ系「それって⁉実際どうなの課」(中京テレビ制作)にそっくりだったとネット上で話題になった。裏側にはどんな事情があるのか。元テレビ東京社員で桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「これまで番組の他局移籍はタブーだったが、すでにそういった常識は存在しない。それはテレビ局がすでに『裸の王様』になっているからだ」という――。

日テレ系の人気番組「どうなの課」とそっくり

6月3日夜にTBS系で放送されたバラエティ特番「巷のウワサ大検証!それって実際どうなの会(以下、「どうなの会」と略す)」を見て、誰もが驚いたのではないだろうか。

3月末まで日本テレビ系でレギュラー放送されていた「それって⁉実際どうなの課(以下、「どうなの課」と略す)」にタイトルから出演者、内容に至るまでそっくりだったからだ。

これまで、番組の放送時間帯が変わったり、同じキャストのまま番組をリニューアルしたりすることはあっても、ほぼ同じ形で他局へ番組が移籍することはなかった。前代未聞の出来事と言っていいだろう。この出来事には、視聴者よりも特に業界人がひっくり返ったのではないだろうか。

なぜ、このようなことが起こったのか。「パクリ番組」と指摘する声もあるが、本当にそうなのか。私は今回の「どうなの会」はパクリでもないし、まったく問題でもないと考えている。むしろ今回の出来事を肯定的にとらえている。その理由をこれから述べたい。

テレビ業界のタブーだった番組の「他局移籍」

そもそも、なぜ今回の番組の他局移籍が「前代未聞」と言われるのか。

スポーツの世界では野球選手が球団を移籍することはよくあるが、テレビ業界では「タブー」とされてきた。それは私が常日頃から指摘しているテレビ局の「性癖」とも言える「横並び主義」が影響している。

テレビ局は自分だけが突出することを嫌う。他局が報道していないネタには手を出したがらないし、他局を批判したり責めたりすることを極端に避けようとする。

ジャニー喜多川氏の性加害問題でも、他局の出方を横にらみするあまり初動が遅れ、非難を浴びた。日本テレビが昨年放送したドラマ「セクシー田中さん」をめぐる改変問題に関しても、新聞・雑誌メディアが報じても、テレビはほとんど無視状態だった。日テレと小学館の報告書が出されたときは、ニュース番組で短く放送しただけだった。