市民活動家のDNAが色濃く残っている

この「文教派」と呼ばれる市民運動家たちは「反米左翼」「文狂地区」などの批判を受けながら町議会をつき動かして、1952年に「文教地区指定」を勝ち取ったのである。

JR国立駅南口ロータリーに掲げられている「国立文教地区」の看板
撮影=プレジデントオンライン編集部
JR国立駅南口ロータリーに掲げられている「国立文教地区」の看板

つまり今、分譲マンションの宣伝文句に使われる「文教都市・国立」というイメージは、政治闘争慣れしている市民活動家の皆さんが築き上げてきたブランドでもあり、今もそのDNAを誇りに思い継承する「市民」がたくさんいるところなのだ。

そんな「市民運動の総本山」のような国立市で、しかも「景観に配慮すべき」と定められた富士見通りで、高層マンションを建てるという行為自体が、積水ハウスの危機管理意識が甘かったと言わざるを得ない。

「完成直前の撤退」は勇気ある決断だった

ただ、この土壇場で恥も外聞もなく「撤退」ができたのは勇気のある決断だった。企業危機管理を長くやっていると、このような「損切り」ができないことが、炎上企業の共通点だと気づく。

このまま進めば明らかに問題があることがわかっていても、「ここまでやってきたのに今さらやめられるか」なんて感じで、体面や立場を優先して結果、火だるまになるパターンが圧倒的に多いのだ。

積水ハウスの判断は表面的に見れば不可解だが、背景を知れば学ぶべき点は多い。危機管理担当者はぜひ他山の石としていただきたい。

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