四面楚歌になった住民に訴えられるリスク
しかも、そこで営業マンたちが頑張って成約にこぎつけたとしても新たなリスクが発生する。それは②の《入居者が「契約時に聞いていた話と違う」と積水ハウスに返金を求める》ということだ。
国立といえば住環境がいいことで知られている。そこに惹かれてこのマンションを買った人からすれば、「景観を破壊するマンションを認めるな」なんて毎日批判を浴びせられたら住環境もへったくれもない。
ファミリーの場合、子どもが「お前の家みんなの迷惑なんだよ」なんてイジメに遭う恐れもある。こういうトラブルが続けば、入居者は当然、契約解除と返金を求めてくるはずだ。
また、法廷闘争や国立市への追及が続いてさまざまな情報が陽の目を見るようになれば、このマンションを購入した人々が知らなかったような事実も明らかになる可能性も高い。
積水ハウス側からすれば、「隠していたわけではなく、わざわざ説明をする必要がないと判断をした」ということでも、入居者からすれば「聞いていないよ」とこじれて最悪、説明義務違反の損害賠償請求が求められることもあるだろう。
つまり、積水ハウス幹部からすれば、「グランドメゾン国立富士見通り」は思うように販売できないし、買った人から後々訴えられる恐れもある極めてリスキーな“不良債権予備軍”と判断をされた可能性があるのだ。
「市民軽視」という市長批判の材料になる
そこに加えて、ダメ押しとなったのが、③の《今年12月の国立市長選の「争点」にされて、さらに不動産価値が落ちる》という最悪のシナリオも見えてきたからではないか。
具体的に言うと、「グランドメゾン国立富士見通り」を予定通り完成させてしまうと、12月の市長選で、自公推薦の現市長の「市民軽視の象徴」として政争の具とされてしまう恐れがあるのだ。
それが伺えるやりとりが国立市議会であった。この問題が注目を集めてから永見理夫市長は、市議会で無所属の小川ひろみ議員にこんな風に責任を追及された。
「近隣の住民も被害を受けていますから、二人三脚で開発事業を進めてきたのも国立市です。協定を結んでやってきたのも国立市です」
これを受けて永見市長は「条例上の適正を期すために指導してきたのが市です。二人三脚で開発事業を進めてきたという今の発言は誤りですので、訂正していただきたい」と反論をした。
永見市長がムキになるのも無理はない。実は小川議員は「国立市景観問題闘争のプロ」とも言うべき人物であり、しかも永見市長が初当選をした選挙で、野党統一候補として立ち塞がったライバルでもあるからだ。