反対した市長が4556万円を支払う結果に

この両者の因縁を理解するには、なぜそもそも国立市でここまで景観問題が盛り上がったのかというところから知らなくてはいけない。そもそものきっかけは、東京都初の女性首長となった上原公子市長(1999年~2007年任期)である。

1999年、国立市の大学通りに高層マンション建設計画が出た時、上原氏は景観と調和しないということで、このマンションを「違法建築」として厳しい対応をしてきた。その後、法令的に建設が認められたことで、デベロッパー側が国立市を訴えて賠償命令が出た。しかし、これで話は終わらない。

JR国立駅から南に延びる「大学通り」
撮影=プレジデントオンライン編集部
JR国立駅から南に延びる「大学通り」

今回の問題は上原氏個人に責任があるのだから、国立市は上原氏に賠償請求を命じるべきだという住民訴訟が行われて判決が確定。これを受けて国立市も上原氏に約3100万円の損害賠償を求めて勝訴。上原氏は延滞金も含めて4556万円を支払わなくてはいけなくなった。

マンション景観問題をめぐる「因縁」の2人

そこで上原氏を「市民」が支える。「くにたち上原景観基金1万人の会」が立ち上がってカンパを集めた。その事務局長を務めていたのが、先ほどの小川議員なのだ。この活動中、小川議員が野党統一候補として市長選に立候補。そこで事実上一騎打ちとなったのが、当時は副市長だった永見氏である。

そして2017年11月、上原氏は小川氏ら支援者とともに国立市役所を訪問し、全国5000人からカンパを募って集めた資金で返済を終え、長きにわたった「国立マンション景観訴訟」は終結した。この時に返済金を手渡した相手が、当選したばかりの永見市長だ。

こんな「因縁」があるからこそ議会での責任追及になったわけだが、もしここで「グランドメゾン国立富士見通り」が解体されなかった場合はどうなっていたか想像していただきたい。

もし「富士山が見えなくなった」「日当たりが悪い」と景観を巡って市民が提訴をしたり、国立市の取り組み不足が槍玉に挙げられるようになっていたら、半年後に行なわれる市長選の大きな争点になっていた可能性は高いのではないか。

しかも、今回の選挙は「上原イズム」を継承する人々にとって負けられない戦いだ。