部下や後輩ができたが、経験不足の相手にどうすれば仕事を任せられるのかわからない。そんな経験はないだろうか。マーケティング大手で統括の立場にある山本渉さんは「私自身もかつては任せることができず、仕事を抱え込んでいた。『丸投げ』というと無責任なイメージがあるが、正しい丸投げができるようになると会社全体の幸せにつながる」という――。

※本稿は、山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

部下を励ますビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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部下に仕事を任せる、さらに「丸投げ」することの難しさ

「任せる」というのは、なぜこんなにも難しいのでしょうか?

簡単なことのように見えて、「任せられない」と悩む人が、私の周りでも多く見受けられます。それはビジネスの場でも、家事などの日常シーンでも同じです。私自身もかつて任せることができず、仕事を抱え込んでいました。

私は現在、大手マーケティング会社のジェネラルマネージャー兼、部長を束ねる統括ディレクターとして、年間100近いプロジェクトのアサイン(仕事を割り振り、適した人材に依頼すること)を担当しています。

規模の大小を問わず、これまでさまざまな仕事を依頼(丸投げ)してきました。そこには成功もあり、その何倍もの失敗もあり、どちらからも学びがありました。

日々マネジメント業務をしていて実感するのは、「間違った丸投げ」が横行しているということと、相手のことを考えた「正しい丸投げ」は個の成長を促し、組織全体の幸せにつながるということです。

この二つの違いを知れば、乱暴に仕事を振って自分だけ楽になろう、などと考える人はいないと確信しています。

「正しい丸投げ」をマスターしてほしい人

・人に頼みごとをするのが苦手
・チームワークがうまくできない
・部下が思うように動かない
・自分でやったほうが早いので任せられない
・新人の教育係を任されて不安
・ついつい自分で仕事を抱え込んでしまう
・自分と同じように動ける人がほしい
・効率が悪いとよく言われる
・労働時間が長くてプライベートな時間が持てない

誰かにお願いごとをする機会は身近にたくさんあり、人生で避けて通れないものです。それならいっそ、得意になってしまったほうが楽ではないでしょうか。さらに、依頼した人が喜んでくれたら、言うことはありません。

「間違った丸投げ」の典型的なパターンとは……

「このデータから必要な要素だけ抜粋して、週明けの朝までに資料つくっといて。○○さんが嫌だっていうからさ、君やってよ。誰にでもできる内容だから、ちゃちゃっとお願いね」

こんな依頼をされて快く受けられる人は、相当な人徳者か、ブラックな環境に慣れすぎて感情を失っているかのどちらかでしょう。

この“丸投げ”には、ダメな要素のすべてが詰まっています。

この記事では、どのように依頼すると相手は気持ちよく引き受けてくれるか、高いパフォーマンスを発揮してくれるかという“どう頼むか”に関して、解説していきます。