「ニセ寝不足」があなたの命を脅かす

頭が痛い、体がだるい。これらを、単なる「寝不足だからだ」と片付けていると危険です。命に関わる大病が隠れている可能性があります。「ヘルスリテラシー」という言葉を聞いたことがありますか。健康や医療に関する情報を吟味し、取捨選択していく能力のことです。そのヘルスリテラシーを、欧州8カ国と比べると、なんと日本の点数は最下位。正しい健康・医療情報に基づき、病気のサインを的確にキャッチし、適切に対応していくことが、日本人は苦手なようです。

森 勇磨 Yuma Mori
産業医・内科医。ウチカラクリニック代表。「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもとYouTube「予防医学ch」を開設、現在のチャンネル登録者数は77 万人を超える。著書に『100年長生き 予防医学で健康不安は消せる!』ほか。

しかしこれはとても重要なことで、ヘルスリテラシーを高めることで、健康上の問題で日常生活が制限されることなく暮らせる「健康寿命」を延ばすことができます。

睡眠が健康の要であることは、もはや“常識”でしょう。でも、私が産業医として面談する際に、何時間眠れているかを確認すると、「よく眠れている」と答える人でも、実際の睡眠時間は、4〜5時間ということが少なくありません。

睡眠時間が短くて寝不足だと、まずメンタル面で変化が表れ、うつ症状だったり、記憶力や思考力の低下だったりが見られるようになります。そして慢性的に寝不足が続くと、次第にダメージが体に蓄積し、さまざまな生活習慣病につながっていきます。実際に、睡眠時間が6時間未満の人は高血圧や糖尿病のリスクが上がったという分析があります。寝不足は病気を呼び込むサインと考えてもいいでしょう。

一方、遺伝しやすい症状や病気があるのも事実です。がんや糖尿病などがそうです。親族のことを振り返ってみて、それに該当すると思われる人は、自分に何かサインが表れていないか、日頃から意識を高めておく必要があります。

たとえば、食生活に注意し、太ってもいないのに、健康診断でコレステロールの数値が高い人がいます。その原因として、変異した遺伝子を受け継ぎ、肝臓のLDL(悪玉)コレステロール受容体がうまく機能しない「家族性高コレステロール血症」が考えられます。心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高く、医師の診断による投薬治療が必要になります。

また、遺伝子の影響によって血糖値の下がり具合が変わることで、糖尿病になりやすい人、なりにくい人がはっきりと分かれます。がんになりやすい遺伝子の変化が、親子間で受け継がれることもあります。

次ページからさまざまな病気のサインを紹介します。「単なる寝不足だ」「これくらいなら大丈夫」と片付けず、適切な予防や処置に役立てて、ヘルスリテラシーを上げていきましょう。

寝不足と間違えやすい代表的な症状