「東京チカラめし」を継続するつもりはなかった

そのため、売り手企業が「3000万円で売りたい」と言っていても、「先方は2000万円に値下げしてでも売却したいはずだ」とわかれば、強引に押し通します。買って、成功しなければ、意味がありませんから。売り手企業も、たとえ3000万円が入らなくても、2000万円あれば存続できます。でも「買いません」となれば、それで終わりなんです。時々「冷たい」と言われますが、意外と「Win-Win」なんですよ。

そういうわけで、東京チカラめしも、なるべく早くお金が必要であることがわかっていました。だから「うちは、明日にでも現金で支払いますよ」と言ったんです。そうして、当社が63店舗を引き継ぐ形となりました。

けれども、そのまま牛丼店を継続するつもりはまったくありませんでした。当時、ガーデンは横浜発祥の豚骨醤油ベースのスープと、太いストレート麺が特徴の「家系ラーメン」で成功していました。トップブランドの一つ、壱角家です。

壱角家「横浜家系ラーメン」
撮影=プレジデントオンライン編集部
壱角家「横浜家系ラーメン」

壱角家1号店は、「日高屋」すら撤退した場所

いまは移転していますが、その1号店は地下に店舗を構えていました。場所は新宿ですが、人気中華チェーンの「熱烈中華食堂日高屋」ですら、撤退したテナントでした。決して、条件はよくなかったんです。けれども、その店舗は当時から東京チカラめしの3~5倍の売り上げを出していました。この結果から「家系ラーメンは、かなり期待できる」ということがわかっていました。だから、東京チカラめしを買収したら、その跡地で壱角家を全国に一斉展開しようと思っていたんです。

牛丼とラーメンは店のつくりが似ていて、厨房やカウンターなど、改装で手を入れるところはほとんどありません。看板や壁などの表面の仕上げをちょっとだけ変えて、改装費もそれほどかけず、60店舗ほどを一気に業態転換しました。予想通り、これがうまくいき、8000万円ほどあった赤字は半年でゼロ。2023年現在は、家系ラーメン全体で年間15億円近い利益を見込んでいます。