「東京チカラめし」を即決買収

その後も、牛丼、ラーメンなど、さまざまな事業を買収し、再生していきました。インパクトがあったM&Aの一つが、当時、焼いた牛肉をご飯にのせた「焼き牛丼」で人気を博していた「東京チカラめし」の買収です。

東京チカラめしは2011年に1号店を東京の池袋にオープン後、テレビや雑誌などのメディアに取り上げられ、瞬く間に有名になりました。最盛期には134店舗にまで拡大していました。

話題性はあったのですが、訪れる客は「一見さん」ばかりで、なかなかリピーターの獲得には至っていませんでした。

M&Aの際、売り手企業の損益計算書や貸借対照表という企業の財務状況をまとめた資料に目を通します。東京チカラめしは新規出店の際、最初の3カ月は1000万円以上の売り上げを出していました。そのため、50店舗、100店舗と、どんどん店舗展開を進めていました。けれども、5カ月後には1000万円が200万円に落ち込んでいたんです。もう、大赤字です。ガーデンが買った63店舗は、毎月の赤字がトータルで8000万円くらい出ていました。

東京チカラめし「焼き牛丼」
東京チカラめし「焼き牛丼」(写真=FOcdp/CC-Zero/Wikimedia Commons

「あんな牛丼店を買って、どうするんですか」

そのため、東京チカラめしを買収すると発表したとき、取引している銀行から「あんな牛丼店を買って、どうするんですか」なんて言われました。翌日には、私の携帯電話はパンク状態です。友人、仕事関係の人、古くからの知り合い……。あらゆる人から着信やメール、LINEといったメッセージが入っていました。忙しかったので、どれも出なかったんですけれど。それほど、東京チカラめしを買収すること自体の話題性が強烈だったのです。

東京チカラめしは一等地に店を出していたので、他にも「買いたい」と名乗り出ていた会社が複数ありました。例えば、大手焼き肉チェーンの「牛角」などです。けれども、彼らはスピードが足りませんでした。

先のステーキ事業の買収の際もそうですが、私は損益計算書や貸借対照表を見て、この企業はいま、どれくらいお金に困っているのかを確認します。M&Aの話が来てから見る、というより、日頃からチェックしているため、情報は常に把握しています。