「山下本気うどん」ヒットの裏側

「明太子が入った、白いクリームうどんとか、やってみませんか」

ある社員の発言をきっかけに、商品の大ヒットにつながったのが、2017年に再生した「山下本気うどん」です。

山下本気うどんは、元芸人のオモロー山下(現・インタビューマン山下)さんが立ち上げたうどん店です。山下さんは香川県ご出身で、名店「うどん慎」でも修業を積まれた、実力派です。そのため、当社がライセンス契約を結んだ後も、ノウハウに従い、特別な仕掛けをつくることもなく、3年ほど淡々と営業を続けていました。

ところが、あるときから、日本で大ヒットしている有名ダンスグループのみなさんが頻繁に訪れ、SNSなどで紹介してくれたんです。

同時期、当社の社員が先述の「白いクリームうどん」を発案し、「白い明太チーズクリームうどん」が誕生しました。白い明太チーズクリームうどんは、明太子と出汁を絡めたうどんの上に、それらが見えないくらいにたっぷりのクリームを絞った逸品です。これがSNSでヒットし、写真を撮りたいお客様がたくさん訪れました。

さらに、同じころ、人気YouTuberも出前をよく頼んでくれるといったことも重なって、相乗効果でどんどん宣伝になりました。

山下本気うどん「白い明太チーズクリームうどん」
写真提供=ガーデン
山下本気うどん「白い明太チーズクリームうどん」

ラーメン業界では「常識外れ」の戦略

ちなみに、私はあまり商品開発に口出ししません。事業部署が「おいしい」と判断すれば、それでよいと思っています。私は、数字しか見ていません。そのメニューがきちんと利益につながるのかはしっかりと確認しています。

けれども、“素人意見”が役に立った場面もありました。例えば、先の壱角家の例です。あるとき「スープをそれぞれの店で作るのは、やめよう」と言ったんです。ラーメン業界からすれば、少し常識外れなことかもしれません。

壱角家を手がける前にも、ラーメン事業を買収し、再生したことがありました。売り手企業は、10店舗ほどある店のスープをそれぞれの職人に作らせていました。けれども、ラーメンは職人に腕がなければ、たとえ店で一からスープを炊いてもおいしくなりません。手を抜く人だっていますし、職人が休みの日だってあります。そのため、買収した10店舗のラーメンを食べ比べてみたところ、味にムラがあったんです。腕利きの職人がいる店のラーメンはおいしいけれど、はっきり言って、まずい店もありました。