ブランド力の源泉は「いつでもあの味が楽しめる」

そもそも、ラーメン職人は一人前になるため、長い年月をかけた修業が必要な世界です。作る人によって味に差が出てしまうのは当然のことでしょう。職人一人ひとりを一人前にして、それをチェーン展開しようとなると、何年もかかってしまいます。1店舗ごとに作っていては、水道光熱費や、人件費も発生します。

そのため、壱角家では、“もっとも腕のよいラーメン職人の味”を広げられなくても、アルバイトでも再現できるような工程を開発し、味の均質化をめざしました。

飲食店を出すうえで、おいしいものを提供することは当然です。けれども、ガーデンは「隣の駅に移動してまでもお越しいただけるような店」をめざしているわけではありません。食べたいときに気軽に立ち寄れて「あそこへ行けば、いつでもあの味が楽しめる」と、安心してもらえるような店を展開しています。

そのためには、全店舗のクオリティーを統一することが欠かせません。頻繁にお越しいただくには、駅前であること、利便性がよいことも外せない条件です。このような積み重ねが、やがて「ガーデンならでは」のブランド力を高めてくれると考えています。

だから壱角家は「1人勝ち」を続けられる

だからこそ、確実に一等地をとらなければいけません。東京チカラめしを、すぐに買い取ろうとしたのはそのためです。買収後、たった半年間で同店のほぼすべての店舗を、壱角家に業態転換しました。結果、壱角家はガーデンのトップブランドに成長し、飲食業界では異例の利益率単月40%を叩き出す店舗も続出しました。

百折不撓編集委員会『意外とイケてる起業家の告白』(日刊現代)
百折不撓編集委員会『意外とイケてる起業家の告白』(日刊現代)

こういったガーデンの状況を見て、時折、大手牛丼チェーンなどが家系ラーメンに参入しようと、新店舗をオープンさせています。けれども、なかなか店舗数が伸びていません。

理由は明白です。都内の一等地は、すでに壱角家が占めてしまっているためです。ガーデンの手法で家系ラーメンを成功させるためには、味、そして立地といったバランスを、すべて網羅しなければならないのです。もちろん、牛丼店をラーメン屋に変えるなどすれば、向こうにも勝算があるかもしれません。けれども、わざわざうまく行っている牛丼店を閉じてまで、冒険する理由はないでしょう。

東京チカラめしの買収で好立地を得たこと、そして、それを一気に家系ラーメンに変えたことで、他社が入りにくい状況ができあがったのです。

【関連記事】
超一等地の原宿・渋谷に現れた「何もない空間」のビルに若者殺到…店舗数が少なくても儲かる真新しい仕組み
実は賃貸に住む建築家が多い理由…プロがこっそり教える「住宅会社が絶対に言わない"住まい"の真実」
「タンパク質をとるのにこれに勝るものはない」医師・和田秀樹が高齢者に強く勧める食材の種類
「ごはんにみそ汁、納豆、漬けものが体によい」は大間違い…日本人がもっと積極的に食べるべき"健康食材"
漢方薬の飲み過ぎで「大腸が真っ黒」になる…医師が「副作用に注意すべき」と警鐘を鳴らす漢方薬の名前